国内証券最大手の野村ホールディングスは27日、米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントとみられる顧客との取引での損失が合計で約3077億円に膨らむと発表した。
同日発表した2021年1ー3月(第4四半期)連結決算で、そのうち2457億円の損失を計上した。同期の純損益は1554億円の純損失(前年同期は345億円の純損失)に陥った。四半期ベースで純損失を計上するのは新型コロナウイルス禍で保有資産の評価損を迫られた20年1-3月以来、4四半期ぶりとなる。
米国の顧客取引に関して、2042億円はトレーディング損失として収益に、416億円は貸し倒れ引き当てとして費用にそれぞれ計上した。23日時点で関連するポジション残高の97%超の処理を終えたという。22年3月期にも約5億7000万ドル(約620億円)の損失計上を見込む。
奥田健太郎社長は急きょ参加した同日の電話会見で「米顧客との取引で多額の損害の可能性を公表以来、顧客や株主など多くの方にご心配をおかけしていることを大変重く受け止めている」とした上で、「事態の収束に向け全社で取り組んでいる」と述べた。経営責任については「経営陣としてリスク管理、マネジメントの高度化でより良いプラットフォームを作っていくことで責任を果たしていきたい」と語った。
野村HDが米証券子会社のトップを交代、リスク管理の高度化狙い (1)
損失が巨額となった原因について、北村巧財務統括責任者(CFO)は米子会社でのプライムブローカレッジ業務における一顧客との取引で、株価上昇によりこの顧客へのエクスポージャーが急拡大し、その後、取引銘柄のうち1社の株価が急落し、その他の取引銘柄の株価も大きく下落したことで、大幅な担保不足に陥ったことだと説明。「今回は個別性が強い特殊ケースと考える」と述べた。
野村HDは3月29日、米国の一顧客との取引に起因して2200億円規模の損失発生の可能性があると発表していた。関係者によると、この顧客は投資会社アルケゴス。取引先金融機関からのマージンコール(追加証拠金の要求)に応じられず、一部の金融機関は債権を全額回収できない事態に陥った。
アルケゴスとの取引を巡っては、野村HD以外にもスイスのクレディ・スイス・グループや三菱UFJフィナンシャル・グループなど国内外の金融機関に影響が広がっている。奥田社長は「国内顧客の海外への関心は高く、特に米国でしっかりした事業基盤を構築することが大事だ」とし、今回の事案があったからといって海外事業を含めたホールセール部門全体の事業戦略を変更することはないと強調した。
野村HDの第4四半期の主な収益(増減は前年同期との比較) |
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野村HDの1ー3月期のホールセール部門は、アルケゴスとみられる取引の影響でエクイティ関連で損失を計上、1659億円の税前損失となった。リテール部門、アセット・マネジメント部門は好調な市場環境を反映し堅調だった。
海外拠点の税前損益は、米州が2037億円の赤字(前年同期は244億円の赤字)、欧州が98億円の黒字(同195億円の赤字)、アジア・オセアニアが132億円の黒字(同33億円の赤字)。合計では1806億円の赤字(同472億円の赤字)だった。
21年3月期通期ベースの純利益は前の期比29%減の1531億円だった。20年4-12月期累計の純利益は前年同期比23%増の3085億円と米国会計基準の適用を開始した02年3月期以降で同期として最高益を計上していた。外部環境は21年1-3月も好調だっただけに、年間ベースでの最高益更新を目前にしてアルケゴス問題に水を差された格好となった。
S&Pグローバル・レーティングの主席アナリスト、松尾俊宏氏は「パイ自体がなかなか拡大しにくい国内状況の下、ビジネスをより安定させるには一定程度海外ビジネスの規模を確保していく必要性があると思う」と野村HDの海外戦略に一定の理解を示す。
一方、ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の田村晋一アナリストは「今回の損失は特殊事例と言うが、歴史を振り返ると、リーマン危機やバブル崩壊など想定以上に損失が膨らむ時は皆、特殊事例だ。想像できないことが起きた時こそリスク管理の質が問われる」と指摘、非常時の危機管理体制の強化を求めた。
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2021-04-27 06:05:08Z
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