東京地検特捜部は29日、所得税約5300万円を脱税したとして、日本大学理事長の田中英寿容疑者(74)を所得税法違反の疑いで逮捕した。付属病院を巡り元理事の井ノ口忠男被告(64)らの背任罪に端を発した事件は“日大のドン”の逮捕に発展した。逮捕容疑は側近の井ノ口被告や、大阪市の医療法人の前理事長籔本雅巳被告(61)から受領したリベート収入を除外し、過少な所得金額を記載した確定申告書を提出、18年と20年分の所得税計約5300万円を免れた疑い。

田中容疑者は20年8月、籔本被告から3000万円を受領したとされる。その後も、理事長再任祝いの名目で3000万円を受け取るなど、井ノ口、籔本両被告からの提供額は1億円を超えるとみられる。田中容疑者の自宅の捜索では、現金1億円超が見つかった。田中容疑者は特捜部の調べに「現金を受け取っていない」と説明し、容疑を否認している。日大広報部はこれまで「(現金は)理事長の役員報酬や妻が経営する飲食店の利益など個人的財産で、税務申告は適切と聞いている」としていた。

田中容疑者は日大経済学部を卒業後に大学職員となり、常務理事などを経て08年に理事長に就任。20年9月に再任された。アマ相撲界に君臨し、日本オリンピック委員会(JOC)の副会長なども歴任した。