日銀の黒田総裁の後任の候補者として政府が提示した、元日銀審議委員で経済学者の植田和男氏に対する所信聴取と質疑が衆議院議院運営委員会で行われました。植田氏は、現在の大規模な金融緩和を継続するとともに、2%の物価安定目標を盛り込んだ政府・日銀の共同声明を当面、変える必要はないという考えを示しました。
この中で植田氏は、「現在、わが国は、内外経済や金融市場をめぐる不確実性が極めて大きい状態だ。消費者物価の上昇率は2023年度半ばにかけて2%を下回る水準に低下していくと考えている」と指摘しました。
その上で、日銀の大規模な金融緩和について「さまざまな副作用が生じているが、経済・物価情勢を踏まえると、2%の物価安定目標の実現にとって必要かつ適切な手法であると思う。これまで日銀が実施してきた金融緩和の成果をしっかりと継承し、積年の課題であった物価安定の達成というミッションの総仕上げを行う5年間としたい」と決意を示しました。
また、2%の物価安定目標の早期実現を目指すとしている政府・日銀の共同声明について、植田氏は「基調的な物価の動きは好ましいものが出始めてる段階だが、2%にはまだ時間がかかるところだ。現在の物価目標の表現を当面、変える必要はないと考えている」と述べました。
さらに、大規模な金融緩和策で大量に買い入れた、複数の株式を集めてつくるETF=上場投資信託の扱いについて「大量に買ったものを今後どうしていくかは大きな問題で、出口が近づいてくる場合には、具体的に考えないといけない。ただ現在は具体的に言及するのはまだ時期尚早と考えている」と述べるにとどめました。
その上で、大規模な金融緩和を見直すタイミングについて「2%の物価安定目標が見通せるようになっていくと見込まれる場合は、金融政策の正常化に向かって踏み出すことができると考えている」と述べました。
そして、2%の物価目標が達成された場合、金融緩和策で続けている大量の国債購入はやめる考えを示しました。
また、午後の委員会では、副総裁候補の、▼前金融庁長官の氷見野良三氏と▼日銀理事の内田眞一氏に対する所信聴取と質疑が行われました。
この中で氷見野氏は「国民が期待しているのは、毎年少しずつでも生活が良くなっていくという展望と実感が得られる経済の実現だ。金融仲介機能の状況、緩和の副作用などについても注意深くみていく必要があるが、現在の状況と見通しからすれば、金融緩和により経済を支え続ける必要がある」と指摘しました。
また、内田氏は「現在の金融緩和の枠組み作成に実務面から携わってきた。この先も金融緩和は必要であり、副作用があるから緩和を見直すということではなく、いかに工夫を凝らして効果的に継続していくかだ。政府と密接に連携しながら、構造的な賃上げを伴う形で2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現すべく全力を尽くす」と述べました。
参議院でも、来週、3人に対する聴取が行われたあと、現在の副総裁の任期が満了となる来月(3月)19日までに本会議で人事案への賛否について採決される見通しで、衆参ともに同意が得られれば任命されることになります。
《詳しく》
★株価 終値 349円16銭値上がり
▼日経平均株価、24日の終値はおとといより349円16銭、高い2万7453円48銭、
▼東証株価指数・トピックスは13.15、上がって1988.40、
▼1日の出来高は12億3456万株でした。
市場関係者は、日銀の総裁と副総裁候補に対する衆議院議員運営委員会での所信聴取について、「植田氏が『金融緩和の継続が適切だ』発言するなど、いずれの候補者の発言も日銀のいまの大規模な金融緩和が続くとの見方につながり、幅広い銘柄に買い注文が出た。ただ、金融緩和策の副作用に言及するなど、金融政策がいずれ修正されるという見方は払しょくされず、値上がりは限定的だった」と話しています。
以下、日銀総裁候補の発言をタイムライン形式でお伝えします。
12:16 植田和男氏への所信聴取 終了
24日の植田氏への所信聴取は金融関係者の大きな注目を集めました。
所信聴取の開始前、円相場は、1ドル=134円台半ばで取り引きされていましたが、その後の為替の変動は限定的で昼過ぎの時点では1ドル=134円台の半ばから後半の範囲での取り引きとなっています。
衆議院議院運営委員会は午後1時から日銀副総裁の候補となっている日銀理事の内田眞一氏と前金融庁長官の氷見野良三氏への所信聴取と質疑が行われる予定です。
★株価 午前終値 294円46銭値上がり
▼日経平均株価、午前の終値は22日の終値より294円46銭、高い2万7398円78銭、
▼東証株価指数・トピックスは11.18、上がって1986.43、
▼午前の出来高は6億7096万株でした。
市場関係者は、日銀の黒田総裁の後任候補の植田氏に対する衆議院議員運営委員会での所信聴取について、「植田氏が『金融緩和の継続が適切だ』などと発言したことを受けて日銀のいまの大規模な金融緩和が続くとの見方が広がった。このため多くの銘柄に買い注文が出た」と話しています。
「コンビニの弁当で値上がり実感」
その上で、「消費者の特に生活必需品の価格変動に対する敏感さについては注意深く見守っていかないといけない」と述べました。
「金融緩和の出口戦略 タイミングや順序控える」
金融緩和の出口戦略について問われたのに対して、植田氏は「基調的なインフレ率が2%に達することが見込まれる状態になったときには、現在採用しているさまざまな強い金融緩和の措置を平時の姿に戻していくということになる。それが具体的に何を意味するか、どういうタイミングで、どういう順序で正常化していくかという点については現時点では具体的にお答えするのを差し控えさせて頂きたい」と述べました。
「ETF買い入れ 効果あったが課題も」
日銀が行うETF=上場投資信託の買い入れの効果について植田氏は、「例えば新型コロナの感染拡大が始まった2020年の春には株式のリスクプレミアムが急上昇したが、日銀の購入によってこれが縮小したいうポジティブな効果が確認されている。ただ、日銀のバランスシートに大量にたまってしまったETFをどうしていくのかという点は大きな課題だ」と述べました。
「魔法のような特別な金融緩和政策ない」
植田氏は、理想とする金融政策は何かと問われたのに対し、「大変難しい質問だ。総裁に任命されたとすると私に課せられる使命は魔法のような特別な金融緩和政策を考えて実行するということではない。判断を経済の動きに応じて誤らずにやることが私に課せられる最大の使命だと思う」と述べました。
「2%のインフレ目標 達成されれば国債の購入縮小」
これについて植田氏は、「日銀が国債を買うことが財政ファイナンスに当たらないようにするために何らかの歯どめが必要であるという観点からそうしたルールが設けられていたと考えています。現在は廃止(ママ・現在は『一時停止』)されているが、それにかわるものが2%のインフレ目標であると私は考えています」と述べました。
その上で「現在、長期国債を購入しているのは金融緩和効果をつくり出し、インフレ率を2%に持続的に引き上げるためです。その帰結として2%が達成されれば国債の購入はそこの時点やその前後から急速に縮小していくということで規律は保たれるつくりになっていると考えています」と述べました。
「長期金利操作対象短縮する考え 1つのオプション」
植田氏は、長期金利の操作対象となる年限を10年から5年に短縮する考えはあるか問われたのに対し、「長期金利コントロールの誘導対象を10年から5年にするという考え方は、出口に向かうということで長期金利コントロールをやめていく場合の1つのオプションであるというふうには考えている。ただ、他にもさまざまなオプションがあり、そのどれが良いか、それぞれの功罪はどうかというようなことはその時々の経済状況によって大きく変わるので、現時点で詳しいコメントは差し控えさせていただきたい」と述べました。
「日銀は政府の子会社ではない」
植田氏は、日銀は政府の子会社にあたるのか問われたのに対し、「一般論として確かに政府が日本銀行の株というか出資券の過半を保有している。しかし議決権のない出資券だ。中央銀行の業務の運営は『日本銀行法』で自主性が確保されている。そういう意味で子会社ではない」と述べました。
「物価目標の達成 第1の目標」
植田氏は、政府の要請などで金融政策を変更することはないと言い切れるかと問われると「中央銀行としては物価目標の達成を第1の目標として、それにまい進するいう覚悟でやっていくという考えだ」と述べました。
「大規模な金融緩和 やむをえなかった」
10年にわたる大規模な金融緩和について、「2%の目標を前提とすると、金融緩和でそれを達成することが日本銀行の責務なので緩和を続けるということになる。それまであまり行われていなかった長期国債の購入を大量に行うなどの手段を取ることによって、金融緩和の力が強まり、それほど長い期間をおかずに2%に到達することができるというもくろみだったと思うが、さまざまな外的なショックもあって達成に長い時間がかかっている。その中で金融緩和をいろいろ形を変え、要素を付け加えて継続した決断はやむをえなかったと思っている」と述べました。
「国債買い入れ 財政ファイナンスではない」
植田氏は、日銀の国債の買い入れは財政ファイナンスにあたるのではないかと問われたのに対し、「第1に政府から直接国債を買っているわけではないこと、重要な点として物価安定目標達成のために国債を買っているので財政ファイナンス、政府の財政資金の調達支援が目的での国債購入ではない」と述べました。
「貨幣的な現象 見えないこともある」
インフレやデフレは貨幣的な現象なのかと問われたのに対し、植田氏は、「経済学の教科書には、デフレやインフレは究極的には貨幣的現象であるという記述がよくある。デフレやインフレは基本的に財やサービスの需要と供給で決まっていくものである。その中で需要の1つの決定要因として貨幣的な要素がある。それが中長期的、あるいは短期的にも強い影響を及ぼすような局面はある一方、最近の日本のようになかなか影響が力強くは出てこない局面も両方ある後者のような場合にはある程度の期間をとってもなかなかデフレが貨幣的な現象であるというふうに見えないこともあるのかなと思っている」と述べました。
「為替変動 影響不均一に注意」
植田氏は「為替変動が経済に及ぼす影響は局面にもよるし、為替レートのスピードにもよるが、きわめて不均一、またエピソードによって異なるということに注意しつつ経済への影響を把握していくことが重要かと思っている」と述べました。
「サプライズは最小限に市場対話を」
その上で「サプライズがあってはならないという指摘もあったが、政策運営は毎回、新しい情報で将来の見通しを変化させ政策も場合によっては変更するというやり方をとるので、時と場合によってはサプライズ的になることも避けられない面がある。ただその場合でも考え方を平時から平易に説明しておくことで、そうしたサプライズは最小限に食い止めることが可能だと思う」と述べました。
「通貨に対する信頼・信任 極めて根本的に重要」
植田氏は「中央銀行が発行している通貨に対する信頼・信任が確保されていることが極めて根本的に重要な点です。そのために物価の安定を維持するいう政策が日銀の第一義的な目標として設定されていると考えている」と述べました。
「2%目標達成時期 確信もって答えることできない」
政府と日銀の共同声明で早期の実現を目指すとしている2%の物価安定目標について、どのくらいの期間で実現を目指すのか問われたのに対して、植田氏は「標準的には金融政策の効果が及ぶのに2年くらいの時間がかかるので、2年先くらいまでに目標を達成するような考え方で目標設定をしたり、金融政策決定の説明をしていくことになっている。しかし、日本経済が過去10年、20年置かれた状況では、この2年くらいで金融政策の効果が発現するいう標準経営はなかなか当てはまらない状態にある。そのため何年後に目標が達成できるか、なかなか現状では確信をもって答えることができない残念な状態にある」と述べました。
「共同声明 金融政策ある程度の成果上げてきた」
また、政府の取り組みについて「政府が働き方改革などの施策を実施したことによって、労働需給がタイト化する中でも女性や高齢者の労働参加が進み、人口減少が続く中でも雇用者数の大幅な増加が実現するというようなプラスの効果が実現してきていると思う」と述べました。
「消費者物価上昇 生活にマイナスの影響を与えている」
植田氏は、消費者物価指数が上昇を続けていることについて「現状の消費者物価全体を見ますと4%強で推移している。これは言うまでもなく消費者の実質所得にマイナス要因として働き、生活にマイナスの影響を与えているという点は強く認識している」と述べました。
「共同声明 ただちに見直す必要あるとは考えていない」
植田氏は、2013年に政府と日銀が政策連携という形で発表した共同声明について「2013年以降、政府と日本銀行がそれに沿って必要な政策を実施し、我が国経済は着実に改善し、その中で賃金も上昇、物価も持続的に下落するという意味でのデフレではなくなってきている。こういう意味で、政府と日本銀行の政策連携が着実に成果をあげてきたものと見ている。従ってただちに見直すという必要があるというふうには今のところ考えていない」と述べました。
「YCC 副作用を生じさせている面 否定できない」
長期金利と短期金利に操作目標を設けて金融緩和策を行う今の枠組み「イールドカーブコントロール」について、植田氏は「さまざまな副作用を生じさせている面は否定できないと思う。そのため日銀は去年12月以降、その副作用をなるべく緩和する意図のもと、さまざまな措置を採用してきていると思う。現在はその効果を見守っている段階だと私は考えている。将来、イールドカーブコントロールを見直す際には、さまざまなオプションがあるが1つ1つのアクションの功罪について詳しく具体的に触れることは差し控えたい」と述べました。
「YCC 時間をかけて議論を重ね 望ましい姿を」
そのうえで「基調的な物価の見通しが一段と改善していくという姿になっていく場合にはイールドカーブコントロールについても正常化の方向での見直しを考えざるを得ないと思う。一方で、なかなか改善せず力強い金融緩和の継続が必要な場合は市場機能の低下を抑制することに配慮しつつ、どうやって継続するか考えていかないといけないと思っている」と述べました。
「マイナス金利 プラスの影響も」
植田氏は、いまの大規模な金融緩和策で続けているマイナス金利政策について「金融機関の収益などに与える影響を通じて、金融仲介機能に悪影響を与えてきた可能性はあると思っている。ただ、マイナス金利が適用されるのは、当座預金のごく一部にとどまるような工夫がなされ、副作用の緩和策が採用されている。金融機関は平均的には充実した資本基盤を備えており金融仲介機能はある程度円滑に発揮されている。また、マイナス金利を含む低金利が企業の収益や借り入れなどにプラスの影響を与え、金融機関にもプラスの影響が間接的に及んでいる面もあると思っている」と述べました。
「ETFの出口戦略 時期尚早」
大規模な金融緩和策で大量に買い入れた株価指数に連動したETF=上場投資信託を今後、どのように扱っていくのか問われ、植田氏は「大量に買ったものを今後どういうふうにしていくかは大きな問題で、基調的な物価の見通しが改善して出口が近づいてくる場合には具体的に考えないといけない問題だと思う。その際には政策委員の方々とも相談して必要な情報発信をしていく必要がある。ただ現在は具体的に言及するのは、まだ時期尚早と考えている」と述べました。
「国債 売却オペレーションに至ることはないだろう」
その上で「そのかわりに、引き締めの局面では日銀当座預金の金利を引き上げていくというやり方になると思う。ただ、この際、財務面で懸念されるのは保有している国債の金利と当座預金の支払い金利、これが逆ざやになって収益にマイナスの影響を及ぼすとケースだ。しかし、これについては、そういう事態に備えて債券取引に関する引当金を積んでいると理解している」と述べました。
「物価目標達成された暁には大量の国債購入やめる」
植田氏は、金融緩和策で続けている国債の買い入れについて「現在、大量の国債を金融緩和政策の下で購入しているが、これは財政ファイナンスのためにやっているものではないし、市場から購入しているものだ。最大の目的は、持続的、安定的な2%の物価目標を達成することだ。従って、当然の帰結として、それが達成された暁にはこうした大量の国債の購入はやめるという風に考えている」と述べました。
「2%早期実現 表現を当面変える必要はない」
10年前に政府と日銀が発表した共同声明では、2%の物価安定目標を「早期に実現することを目指す」としています。この見直しが必要かと、問われ、植田氏は「基調的な物価の動きは非常に好ましいものが出始めているいう段階だが、2%にはまだ時間がかかるいうところだ。現在の物価目標の表現を当面変える必要はないと私は考えている」と述べました。
★植田氏発言で株価 一時300円超値上がり
日銀の黒田総裁の後任の候補者として政府が提示した経済学者の植田和男氏が24日の衆議院議員運営委員会で「金融緩和の継続が適切だ」などと述べたことを受けて、24日の東京株式市場では、日銀のいまの大規模な金融緩和が続くとの見方が広がり、日経平均株価は一時、300円以上値上がりしました。
「2%目標 のりしろとして適当ではないかという考え方」
植田氏は、日銀がなぜ2%の物価安定目標にこだわるのか問われたのに対し「2%が1つの世界標準の目標だということがある。景気が悪くなるようなマイナスのショックが発生したときに対応する余地が広がる。対応の余地を広げるということをよく『のりしろを確保する』と言うが、この、のりしろとして2%程度のインフレ率が適当ではないかという考え方だ」と述べました。
「金融政策 効果発現するのに時間 要する」
その上で「先行きの見通しを判断する際に極めて重要なものが、基調として物価は今どのへんにあるのかというところだ。これはひと言でどの指標を見れば分かるという簡単なものではない。あらゆる手法を使って基調的な物価の動きを探り当てていくことが金融政策の極めて重要なコアになる仕事であると考えている」と述べました。
「物価上昇率2% 見通せれば正常化へ踏み出すこと出来る」
植田氏は、物価の目標が達成され大規模な金融緩和を見直すタイミングについて「基調的な物価の動きは今、よい動きが出始めていると思う。しかし、今のところは物価の上昇率2%には、まだ間があると考えている。もう少し近づいてきて2%の目標が見通せるようになっていくと見込まれる場合は金融政策の正常化に向かって踏み出すことが出来ると考えている」と述べました。
「消費者物価指数 1月がとりあえずのピークか」
24日に発表された消費者物価指数で生鮮食品を除いた伸び率が4.2%と41年4か月ぶりの高さになったことについて植田氏は「まだまだ物価上昇は続くと、もちろん考えていますが、きょう発表されたデータあたりが、とりあえずのピークになると考えている。次のデータの発表あたりから、かなり大幅にインフレ率のデータは下がったものが出てくると考えている」と述べました。
「金融緩和維持で前向き投資を後押しすること重要」
その上で「今後も成長を続けるためには生産性を高めていくことがより重要になる。こうした観点から企業の人的資本への投資や生産性を高める投資に期待するところだ。金融政策面では、緩和的な金融環境を維持することにより、良好なマクロ経済環境を実現し、企業の前向きな投資を後押しすることが重要だ」と述べました。
「海外中央銀行との連携、市場関係者との対話を適切に」
その上で「日本銀行の審議委員を務めたとき、あるいはその後の内外の大学での研究教育を行っていたときを含めて、さまざまな国際的な会議の場で学者、実務家と議論を行ってきました。このような中で形作ってきた人脈、知見を生かして、海外中央銀行との連携、市場関係者とのコミュニケーションを適切に行っていきたいと考えています」と述べました。
「中小企業・地方経済 きめ細かな把握に努める」
植田氏は、金融政策のかじとりにあたって「経済の現状を的確に評価するため、マクロの経済統計の詳細な分析だけでなく、中小企業や地方経済の視察を含めミクロ経済のきめ細かな把握に努めて参りたい」と述べました。
「物価安定の実現には自主的な運営が適切」
その上で「同時にマクロ経済政策の運営にあたっては政府と中央銀行が十分な意思疎通を図ることも必要だ。日本銀行総裁はこれまでも定期的に総理と直接お会いする機会を頂いてきた。財務大臣とも、さまざまな機会で意見交換をさせて頂いてきた。承認頂ければ、私もぜひそうした機会を頂き、しっかりと連携を図ってまいりたいと考えている」と述べました。
「賃上げできる環境を整えることが重要」
植田氏は「現在はしっかりと経済を支え、企業が賃上げをできる環境を整えることが重要であると考えている。そのため金融緩和を継続して賃金の上昇を伴う形での物価安定目標の持続的安定的な実現を目指していくことが適当と考えている」と述べました。
「目標の達成に全身全霊を傾けていく」
植田氏は、日銀のトップとしての心構えについて「目標をはっきりさせ、目標に向かって自らが率先して努力する姿を見せること、それから組織の構成員がそれぞれ力を発揮できるよう仕組み、工夫をいろいろ講じていく。目標の達成に全身全霊を傾けていく」と述べました。
「総仕上げを行う5年間としたい」
植田氏は「これまで日本銀行が実施してきた金融緩和の成果をしっかりと継承し、新日銀法施行以来25年間、日本銀行にとっても、また私自身にとっても積年の課題であった物価安定の達成というミッションの総仕上げを行う5年間としたいと考えております」と述べました。
「発言・行動が大きなインパクト及ぼし得ること十分認識」
植田氏は、日銀総裁の職務について「総裁への就任を承諾いただいた場合は、私の発言や行動が市場や国民生活などに大きなインパクトを及ぼし得ることを十分認識し、職責を果たしていきたいと思います」と述べました。
「金融緩和 継続することが適切」
その一方で「さまざまな副作用が生じていますが、経済・物価情勢を踏まえると、2%の物価安定の目標の実現にとって必要かつ適切な手法であると思う。今後とも情報情勢に応じて工夫を凝らしながら金融緩和を継続することが適切であると考えている」と述べました。
「物価上昇率2% 持続的・安定的達成には時間 要する」
植田氏は、物価の現状について「我が国の基調的な物価上昇率は、需給ギャップの改善や中長期的なインフレ率の上昇に伴って緩やかに上昇していくと考えられる。ただ、目標の2%を持続的に安定的に達成するためには、なお時間を要すると考えている」と述べました。
「政府と密接に連携しながら適切な政策行う」
植田氏は「私を日本銀行総裁として認めていただければ、政府と密接に連携しながら経済、物価情勢に応じて適切な政策を行い、経済界の取り組みや政府の諸施策と相まって構造的に賃金が上がる、そういう状況をつくり上げるとともに、一時的でなく持続的安定的な形で物価の安定を実現したいと考えております」と述べました。
「経済・金融市場めぐる不確実性 極めて大きい」
植田氏は、日本経済の現状について「現在、我が国はコロナ禍から持ち直しているところで内外経済や金融市場をめぐる不確実性は極めて大きい状態です。消費者物価の上昇率は現在4%程度と、目標とする2%よりも高くなっている。しかし、その主因は輸入物価の上昇によるコストプッシュで、需要の強さによるものではない。こうしたコストプッシュ要因は今後減衰していくと見られ消費者物価の上昇率は来年度23年度半ばにかけて2%を下回る水準に低下していくと考えている」と述べました。
9:30 植田氏への所信聴取 始まる
金融関係者も大きな関心を寄せる24日の所信聴取。円相場は午前9時30分現在、1ドル=134円台半ばの水準で取り引きされています。
以下、日銀副総裁候補の発言をタイムライン形式でお伝えします。
14:51 副総裁候補 所信聴取と質疑終了
参議院でも、来週、総裁候補の植田和男氏を含めた3人に対する聴取が行われたあと、現在の副総裁の任期が満了となる3月19日までに本会議で人事案への賛否について採決される見通しで、衆参ともに同意が得られれば任命されることになります。
氷見野氏「共同声明 変えなければという印象ない」
氷見野氏は「現在、私が共同声明を読んだ上でここを直ちに変えなければならないという印象を受けたところはない。少なくとも実際の政策の実施にあたっては今の局面では、まず賃上げを伴う物価安定というところを最優先に考えていく」と述べました。
氷見野氏「日本の地位低下 反転へ全力尽くしたい」
氷見野氏は副総裁の任期5年間でやり遂げたいことを問われたのに対し、「日本の相対的な地位が下がり続けてきたというのが私が公務員になって以降、見続けていたことだ。5年後には反転していたと、日銀だけでできるわけではないが、そういうことになっているよう全力を尽くしたい」と述べました。
氷見野氏「金融緩和を継続する必要ある」
氷見野氏は、金融緩和の見直しが必要かどうかと問われ、「現時点で効果と副作用を比較すれば効果が上回っており現時点では金融緩和を継続する必要がある。海外の経済情勢を含め上向き、下向きいろんな可能性があるのでシナリオをいくつも考えておきながら状況に応じて機動的に対応していく」と述べました。
氷見野氏「国際的なルール作り能動的にやっていく」
氷見野氏は国際的なルール作りの重要性について、「私は国際関係の仕事が長くG7諸国の中央銀行であれば総裁か副総裁はよく存じ上げている関係にある。ルール作りでは受け身ではもう全然勝負にならない。アジェンダの設定や提案、国際世論への発信まで能動的にやっていかないといけない状況にある」と述べました。
内田氏「日銀の金融政策 間違っていなかった」
内田氏は、これまでの日銀の政策に間違いはなかったのかと問われたのに対し、「15年のデフレ期で定着してきたものを変えていくには思ったより時間がかかった。有効な金融緩和を模索してきたのがこの10年間だった。やってきたこと自体は金融政策として出来るものとして間違ってはいなかったと思っている」と述べました。
内田氏「デフレ下に定着した意識強固 変化の芽も」
大規模な金融緩和によって2%の物価安定目標が実現できていない理由について内田氏は、「原油価格の下落など外的なショックもあるが、根本的な原因はデフレ下に定着してしまった物価と賃金がともに上がらないという意識が思っていた以上にずっと強固だったことが要因だと思う。いま、この意識が変わったとは、とてもいえる状況ではないが、変化の芽が出始めてきているように思う」と述べました。
内田氏「政策の延長線上で2%物価上昇の目標達成」
内田氏は、大規模な金融緩和策の効果について、「実質金利を下げることで我々のことばで言う『需給ギャップ』を改善させ、労働市場が改善し失業率が下がるとか求人が増える。こうしたことを通じて賃金が上がり、物価が上がる。こういう順番で政策効果が波及していく。このこと自体はこの10年間で効果を持ったと思っている。この政策の延長線上で2%物価上昇という目標の達成があると思う」と述べました。
内田氏「出口戦略 議論は時期尚早 適切に対応できる」
その上で「現在の枠組みの設計に、実務面から携わってきた者として、当然のことながら出口のことは導入当初から考えている。将来の出口の時点においてどのような経済や物価、金融情勢になろうともそれに応じて適切に対応することはできると申し上げたい」と述べました。
内田氏「現在の物価高すぎる 上昇圧力は次第に減衰」
24日、発表された1月の消費者物価指数で生鮮食品を除いた伸び率が4.2%と41年4か月ぶりの高さになったことについて内田氏は、「現在の4.2%は、もちろん高すぎるインフレだが、要因は輸入物価の上昇からの価格転嫁ということだ。この部分は一時期よりは安定してきていて上昇圧力は次第に減衰していくというのが基本的な考え方だ」と述べました。
内田氏「物価上昇の家計影響 丹念に点検」
物価上昇が暮らしに及ぼす影響について質問されたのに対して、内田氏は、「日銀が行う生活意識に関するアンケート調査からも景況感や暮らし向きの受け止めはこのところ悪化している。身の回りの食料品や日用品の値上げが影響していると考えている。特に相対的に所得の低い方々ほど、物価上昇の影響をより大きく受けているので、物価上昇が家計に与える影響は、丹念に点検していく必要があると考えている」と述べました。
氷見野氏「構造的に賃金上がる状況目指す」
また、金融庁の長官を務めた経験に触れ「マネジメント改革や働き方改革、職員が自発性を発揮しやすい環境作りに努めてきた。そうした面でも貢献できないかと考えている」と述べました。
内田氏 「金融緩和継続へアイデア出したい」
その上で内田氏は、「日銀はこうした効果と副作用を比較した上でできる限り副作用を小さくする工夫を行いながら金融緩和を行ってきた。日銀が直面している課題は、副作用があるから緩和を見直すということではなく、いかに工夫を凝らして効果的に金融緩和を継続していくかだと考えている。さまざまな政策手法の設計に携わってきた経験からこれからも経済物価や市場の状況変化に適応しながら、しっかりと緩和を続けていけるようにアイデアを出してまいりたい」と述べました。
13:00 副総裁候補への所信聴取始まる
衆議院議院運営委員会では、日銀副総裁の候補となっている日銀理事の内田眞一氏と前金融庁長官の氷見野良三氏への所信聴取が午後1時から始まりました。
《所信聴取ポイントは》
所信聴取の流れは
所信聴取は午前9時半から始まり、まず総裁候補の植田氏が所信を述べます。その後、昼すぎにかけて各党議員からの質問を受けることになっています。
副総裁候補への所信聴取は午後1時から始まり、内田氏、氷見野氏それぞれが所信を述べたあと各党議員からの質問を受ける予定です。
ポイント1 大規模緩和策の受け止め
黒田総裁のもとでの異例の大規模緩和は、行き過ぎた円高を是正し、デフレでない状況を実現しました。専門家の間でも景気や物価に一定のプラスの効果があったという見方があります。
また、大量の国債の買い入れで、日銀が保有する国債の残高は去年9月末の時点で500兆円を超え、短期を除くと半分以上を日銀が保有する異例の状況となっています。国の財政規律の緩みにつながったという批判も出ています。
さらに株価指数に連動したETF=上場投資信託を大量に買い続けた結果、保有額が膨らみ、日銀は株価値下がりのリスクにさらされています。市場関係者などからは日銀が実態として筆頭株主になっている日本企業も多く、日銀が市場をゆがめているという批判もでています。
こうした課題にどう向き合うのか。そして今の金融緩和を続けるのか。それとも修正を検討するのか。最も注目されるのは、この点です。
金融政策の修正については、マイナス金利をどうするのか、そして、長期金利と短期金利に操作目標を設けるいわゆる「イールドカーブコントロール」の枠組みを見直すのかという点が焦点となります。
ポイント2 政府、日銀の関係とそれぞれの役割
政府・日銀が、デフレからの脱却と持続的な経済成長の実現に向けた「共同声明」を発表してから10年となりますが、その内容を見直すかどうかが焦点となります。
共同声明は、この10年にわたって一度も見直されていませんが、専門家などの間では、日銀の金融政策に柔軟性を持たせるため、物価上昇率の目標を「2%程度」などと幅を持たせたり「できるだけ早期に」としている達成時期をより中長期的な目標に改めるべきだといった指摘も出ています。
その一方で、仮に共同声明を見直せば、日銀が金融政策を修正するのではないかという観測が広がり、金融市場に動揺をもたらすおそれがあるという指摘もあります。
政府と日銀の「共同声明」では、財政運営に対する信認を確保するため財政健全化の取り組みを推進するとされています。
しかし、この10年で国債の発行残高は急増し、その背景に日銀が大量に国債を買い入れる大規模な金融緩和が続けたことがあると指摘する声もあります。所信聴取では、財政規律についてどう考えるのか、という点もポイントとなります。
最後にもう1つ、植田氏が就任すれば戦後初の学者出身の総裁となりますが、学者としての知見やこれまでの研究実績を金融政策にどのように生かすのか、これについてどう発言するかも注目されます。
植田和男氏とは
1974年に東京大学理学部を卒業後、経済学部の大学院で研究活動に取り組みます。アメリカのマサチューセッツ工科大学大学院に留学し博士号を取得。1993年に東京大学経済学部の教授となります。
そして1998年から7年間日銀の審議委員を務め「ゼロ金利政策」や「量的緩和政策」の導入を理論面で支えました。
その後、東京大学大学院経済学研究科の教授として大学に戻りました。2017年からは共立女子大学の教授を務めています。
また、日本政策投資銀行の社外取締役や日銀金融研究所の特別顧問など学外でも幅広く活動しています。
内田眞一氏とは
東京大学法学部を卒業後、1986年に日銀に入り、アメリカのハーバード・ロースクールを修了。金融政策の立案を担う企画局に長く在籍しました。
2010年から新潟支店長を務めたあと、2012年には49歳で企画局長に就任し、5年間にわたって金融政策の実務を取りしきりました。
局長就任のよくとしには黒田総裁が就任し、2%の物価目標の達成に向けた大規模な金融緩和やマイナス金利の導入、そして、長期金利と短期金利に操作目標を設ける「イールドカーブコントロール」の策定に携わりました。
その後、名古屋支店長を経て、2018年に理事に就任し、去年、再任されましたが、この間、大規模な金融緩和政策で中心的な役割を担ってきました。
氷見野良三氏とは
東京大学法学部を卒業後1983年に当時の大蔵省に入り、1987年にアメリカのハーバード・ビジネススクールでMBA=経営学修士を取得。2003年から2006年にかけては金融庁から派遣されて主要国の金融監督当局でつくるバーゼル銀行監督委員会の事務局長を日本人として初めて務め、新たな資本規制の策定などに取り組みました。
2016年に金融庁の国際担当で次官級の金融国際審議官に就任し、2019年には、各国の金融当局などでつくるFSB=金融安定理事会で、当局間の協調促進に向けた活動を行う常設委員会の議長を務めました。
そして2020年から1年間、金融庁の長官を務め、新型コロナウイルスの影響を受けた企業への資金繰り支援などの対応にあたりました。
退任後は、東京大学公共政策大学院で客員教授を務めているほか、去年からはシンクタンクのニッセイ基礎研究所でエグゼクティブ・フェローを務めています。
国会の「同意人事」とは
対象は▽日銀の正副総裁や審議委員のほか▽国家公安委員会の委員や▽原子力規制委員会の委員長など39機関274人です。
内閣が衆参両院の議院運営委員会の理事会に人事案を提示し、それぞれの本会議で採決されて、衆参ともに同意が得られれば内閣が任命することになります。
「同意人事」は予算案のような衆議院の議決の優越や、法案のように参議院で否決された場合に衆議院で再議決することは認められておらず、どちらかで否決されたら任命できません。
このため、2008年には当時の民主党など野党側が参議院で多数を占める「ねじれ国会」のもと、福田政権が提示した日銀総裁の人事案に同意が得られず、戦後初めて総裁が空席となる事態が起きました。
また「同意人事」の対象のうち▽日銀の正副総裁のほか▽人事院の人事官▽会計検査院の検査官▽公正取引委員長▽原子力規制委員長は「重要な任務を担っている」として、両院の議院運営委員会で候補者から所信を聴取し質疑を行うことになっています。
所信の聴取をめぐっては、10年前に日銀の副総裁候補だった岩田規久男氏が衆議院での聴取の際に、2%の物価安定目標を実現する期限について問われ「2年で達成できると思うし、達成しなければならない。達成できない時の最大の責任の取り方は辞職することだ」と述べ、その後、目標が達成できず発言との整合性を問われました。
今後の流れは
その後、各党が人事案への賛否を検討し、両院の本会議で採決が行われます。本会議での採決は現在の副総裁の任期が満了となる3月19日までに行われる見通しです。
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2023-02-24 07:01:00Z
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