22日、ソフトバンクが3つのブランドでの料金プランを発表した。詳細は本誌の各記事をご覧いただきつつ、本稿では、本誌インタビューに応えた榛葉氏の考え、そして発表会の質疑応答をまとめてご紹介しよう。
インタビューおよび質疑応答には、ソフトバンク常務執行役員の菅野圭吾氏と寺尾洋幸氏も同席した。インタビュアーは本誌関口と法林岳之氏。
本誌インタビュー
――10月27日にワイモバイルで「シンプル20(今回の発表でシンプルLに改定)」を発表し、ワイモバイルとソフトバンク間での乗換手数料の無料化などを、他社に先駆けて発表してきました。今回は3ブランド揃っての発表となりましたが、ここに至るまで、どのような考えで進めてきたのでしょうか?
榛葉氏
毎年いろんな新しい取り組みはありますよね。新たなブランドを作るというのは、大きな取り組みですが、この業界の競争は激しく、ここまでに、寺尾や菅野らとともに、議論を重ねてきました。
今年、5Gは始まりました。しかし(エリア面など)大きく変わるのは来年です。コロナ禍の影響も意識しなければいけません。このタイミングはお客様に(ライフスタイルの変化にあわせた新たな料金を)ご検討いただく一番いいタイミングじゃないかと考えたわけです。
当社の宮内(謙社長)も「1億総スマホ」と表現していますが、国内1億人に向けたビジネスはそうそうありません。スマートフォン、携帯電話のサービスは、年代や生活によって、使い方が本当に異なります。
そうした中で、「ソフトバンクの下に3つのブランドがある」と分かりやすく整理し、ちゃんと選択肢がある、自分に合ったものがある、と複雑さを避けて、わかりやすくお伝えできればと。
これまでは大容量のソフトバンクブランド、中容量のワイモバイルブランドの2つを軸にしてきました。そこへ、MVNOではない、第3のブランドとして「SoftBank on LINE」をご用意します。3つを一緒に発表したほうが良いだろうと。
「割引前の価格をちゃんと提示する」
榛葉氏
それから、これまでは、良かれと思って細かく値引きする、期間限定の割引をご用意することがありました。しかしお客さまからは「わかりづらい」「6カ月経つと高くなった」という声もいただいており、そうした声を真摯に受け止め、シンプルにしようといったことを考えて、今日に至ったのです。
――その「期間限定割引」について教えて下さい。料金プランとしては組み込まないということですが、商戦期、あるいは、3Gからの移行促進、5Gへの乗換促進では効果がありそうな施策でもあります。今後、まったく実施しないのでしょうか?
榛葉氏
オフィシャルな、今回発表したような形で料金プランに組み込むようなものは、辞めようと思います。
一方で、いわゆるキャンペーンとしてわかりやすく、不満に思っていただかないようなもの、「おトク」と受け止めていただけるものは、(実施する)そういう方向で考えたいです。「一回決めたから一切やらない」というわけではありません。
菅野氏
大切なポイントとして、「割引前の価格をちゃんと提示する」ことは、お客さまにとって明確に、シンプルに見えるだろうと。今回、我々としての意思表示です。
榛葉氏
プレゼンテーションの資料でもお一人分の定価を示し、割引後の価格をご紹介したのです。
――「定価をきちんと示していきましょう」という方向に踏み出した、背中を押した要素はどういったものでしょうか? 政府からもいろいろと声がありましたが……。
榛葉氏
最終的には、お客さまとのコミュニケーションを踏まえてですね。
官邸や総務省からの声のことを指摘されていると思うのですが、それは真摯に受け止めています。(総理などの発言は)最終的に国民のことを考えなさい、ということだと理解しています。良い方向に努力しなさいと。
もちろんそれだけ(で動いたわけ)ではありません。3社のなかで選んでいただけるように3ブランドの選択肢を用意することを、経営判断したわけです。
端末ラインアップについて
――SoftBank on LINEでの端末ラインアップはどうなるのでしょうか。
寺尾氏
SoftBank on LINEがオンラインに特化する際、eSIMにも対応するなかで、「eKYC」(オンラインでの本人確認)と組み合わせて、すぐ切り替えていただけるようにしようと開発を進めています。
SoftBank on LINEの端末ラインアップについてはまだ決めていないというのが正しいところです。お客さまの声や、市場動向を見て決めていきたいですね。
――ブランドごとに扱われる端末ラインアップについては、どのような考え方になりますか? たとえば最新のiPhoneは、ソフトバンクブランドだけになる、ですとか。
榛葉氏
3つのブランドを刷新して発表したばかりですので、今後の動向を見ながら決めていきたいですね。
――あ、まだ明言されないのですね。
榛葉氏
いろいろと話をしながら、ですね。
eSIMについて
法林
SoftBank on LINEではeSIMを扱うとのことですが、ソフトバンクブランドやワイモバイルブランドでもeSIMを運用する可能性はありますか?
寺尾氏
政府の研究会でも議論が進められており、ソフトバンク、ワイモバイルでも導入する方向です。どの端末で、というのはまだですね。
菅野氏
端末によって(挙動の)違いもあります。店舗でもお客さまからのご要望の声も結構多く、何が良いか見ていく必要があります。
寺尾氏
店舗ですと物理SIMのほうがサポートしやすいところはあります。今回は、オンライン限定ですので、eSIMのほうが便利でしょう。一方で、店舗でサポートする場合は物理SIMなら瞬時に差し替えられます。ニーズにあわせて変わっていく部分があると思っています。
また政府から要求されたら?
法林
今秋、菅義偉総理や武田良太総務大臣から、携帯電話料金の値下げに関する発言が続きました。値下げ自体は、ユーザーとして大歓迎ですが、“官製値下げ”という印象が強いです。ルールを決めずに値下げの方向に動いたことは、将来に禍根を残したように思います。数年後、また値下げを政府が発言した場合、どうするのでしょうか。
榛葉氏
そうですね……同じ答えで恐縮ですが「真摯に受け止める」というスタンスに変わりはありません。
ただ、我々もしっかり経営していかねばなりません。株式会社ですから、90万以上の個人株主もいらっしゃいます。これは(個人株主の数が)国内最大規模です。そのご期待にも応えなきゃいけません。
最大限できることは何なのか、それをひねり出していく。今はこう申し上げるしかありません。でもそれが経営の責任があります。工夫を重ね、コンシューマー事業の戦況が厳しくなれば、ソフトバンク全体としては多角化を進めており、トータルで(株主に)応えたい。
また、日本の通信品質は素晴らしいものです。これは今後も維持したい。たとえば、アップルの発表会に訪れると、会場前でも繋がらないことがありました。僕らの想いとしては、「日本は4Gも5Gも繋がる、スマホ先進国だ」と胸を張れるようにしたい。しっかりやっていきたい。とはいえ、(通信品質の維持を)言い訳にしてはいけません。
そのあたりが経営責任、ということになるのでしょう。ちょっと優等生的なお答えですが(笑)。
――ありがとうございました。
質疑応答
以下、プレゼンテーション後の質疑応答をご紹介する。
――LINEモバイルをあえて残す理由は? 吸収後、MNOが運営するMVNOになると思うが。
榛葉氏
LINEモバイルは、3月のSoftBank on LINEのサービスインをもって、新規受付を停止する予定。既存ユーザーの移行、引き続きの利用はしっかりご説明していく。これからは「SoftBank on LINE」一本になる。
――ドコモのプランをかなり意識しているように見えるが、どう考えているのか。
榛葉氏
この業界は競争が激しい。最終の意思決定として競合の動きは意識している。しかし最終的に決めるのはお客さま。これまでの経験、アンケートなどをもとに、我々がいま、最大限にできる価格はどんなものか、経営判断として決めた。
ドコモさんもオンライン専用と発表している。今回ご紹介したLINEのブランドは、8600万人が毎月利用しているサービス。全世代に支持されているが、特にデジタルネイティブ世代の10代~20代は8割以上が使っている。ブランドとの親和性がある。20GBだが、LINEの通信量はカウントしないことが特徴のひとつになる。
オンライン専用サービスを展開する際、スタッフのサポートがない。画面上の案内を見て、手続きしていただくことになり、やはりインターフェイスが大事。いま、身近に使われているLINEから申し込みや変更ができることは、小さいことのようで利便性が高いのではないか。そういう点を打ち出したい。
大容量プランについても、4Gと5Gをあえて分けてることはしていない。(ドコモの場合、4Gでは)60GBでいくら、という設定よりも、そのレンジを希望される方は5G時代では、アンリミテッドで、わかりやすくシンプルな価格がいい。
ドコモさんの5G向けの料金と比べても、私どものほうが少しお安くしている。総合的に考えて料金は決めた。
――他社の動向によっては追加値下げの余地はあるのか。
榛葉氏
今回、思い切った価格を設定にした。しかし競争は激しく、状況を見ていく。
――LINEモバイルを吸収した理由は?
榛葉氏
これからソフトバンクの経営する、オンライン専用ブランドが必要な時代になった。LINEモバイルはMVNOでもあり、共有の経営でもあった。ソフトバンクの第3のブランドとしては、LINEモバイルと同じような形で運用したいと考えた。
またZホールディングスとLINEとの経営統合が予定されており、ソフトバンクグループとしてシナジーをしっかり出していくという意味もある。
お客さまからの声としても「ソフトバンクのブランド」にすると判断した。
――ワイモバイルブランドについては、すでに乗換手数料の無料化が発表されている。別ブランドにする意味はまだあるのか?
榛葉氏
ワイモバイルブランドを提供して6年ほどになる。安いほうが選ばれるのでは、とかつて指摘もあったが、容量にあわせて選んでいただいている。大容量のソフトバンクと小中容量のワイモバイルと、2つのブランドは明確に浸透し認知され、それぞれのブランドに価値がある。
そのブランドごとに、違った形のプランを提供するほうがわかりやすく、選択肢も明確に広がる。2つのブランドの存在が重要と考えて続けることにした。
――家族向けの割引が、ブランドをまたいで適用されない理由は?
榛葉氏
ここがブランドの妙。ブランド内で完結したほうがわかりやすいのではないかと考えた。ただ、いろいろとお客さまの声もあり、総合的に検討したい。
――ソフトバンクの段階制のプランは今後終了し、小中容量はワイモバイル、といった形になるのか。
榛葉氏
ミニフィットプランは現行のままで、新規も受け付けるが、今後は検討していく。今回3ブランドの刷新を発表したばかりで、お客さまの声を伺いたい。しばらくは並走となる。
――ワイモバイルの10GBプランと、SoftBank on LINEの20GBプランは同じ2980円だ。同じ価格で容量が異なる理由は?
榛葉氏
サポートの有無が一番のポイント。オンライン専用では、コールセンター、店舗などのコストが削減というか。ここの差が表れている。サポートをしっかりやりながらだと、(ワイモバイル、ソフトバンクの)あれくらいの価格になる。
――業績への影響、どのような考え方なのか。2月、3月スタートであれば2021年度へ影響するだろう。減益を容認する覚悟なのか。ほかでカバーする算段があってのことか。
榛葉氏
ソフトバンクも上場会社であり、具体的な業績予想はコメントを控える。決算説明会で社長の宮内から報告があるだろう。
一方、事業を預かる執行役員としては、今回思い切った価格にしたことで、ユーザー1人あたりの単価は下がることは当然だと思う。しかしソフトバンク全体で見ると、コンシューマーの通信事業の比率は、売上・利益でも30%ほど。キャリア事業は中核にしつつ、いろいろやるんだと準備してきた。
ZOZO、アスクル(の買収)、ヤフーの強化もそう。PayPayも、損益は別として期待できる。ソフトバンク全体では多角化で経営責任を果たしたい。
コンシューマー向けのスマホ事業も(シェアは)第3位で伸びしろがある。今回のプランで、もっともっと数を増やして、デジタルシフトなどで、競争力を挙げるためのコスト削減を進め、お約束する業績を達成したい。
――これまでのLINEモバイルは、1000円台で、とにかく安く使いたいという方に向けたプランがあった。一方、今回はそうしたプランはないように思えるが、どう考えているのか。
榛葉氏
SoftBank on LINEがオンライン専用と言えども、20GBで2980円は魅力的だと自負している。(その他のプランは)お客さまの反響を踏まえ、今後、いろいろと検討していきたい。
――総務省で協調的寡占について問題視されている。LINEモバイル吸収で、競争する事業者が減り、MVNOの競争力も削がれる。協調的寡占が助長される流れかと思う。今後についてどう考えるか。
榛葉氏
LINEモバイルを、SoftBank on LINEにすることについての影響はコメントを控える。しかし、事業者として、やはり常にお客さまに向き合い、ベストを提供していくことが一番の責務。監督省庁からご意見があれば真摯に受け止めて議論し、意思決定していく。それ以上については、今日の段階でコメントは控える。
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2020-12-22 08:30:46Z
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