ECサイト「楽天市場」の出店者による任意団体「楽天ユニオン」は1月22日、同サイトの送料無料化に反対する1766人の署名と措置請求書などを公正取引委員会に提出した。代表者の勝又勇輝氏は、報道陣に「公取委の担当者から『独占禁止法にのっとって対応する。すぐに動く必要があると判断した場合は、迅速に対応する』と言っていただけた」と手応えを語った。
楽天は2020年3月18日から、楽天市場で税込3980円以上を注文した顧客に対し、送料を一律0円にする予定だ。この制度がスタートした場合、楽天側には新規顧客の獲得と売上の増加が見込まれる一方で、出店者は送料を全額負担する必要があるため、楽天ユニオンは反発を強めている。
楽天の送料無料化は何が問題なのか
出店者が送料を全額負担した場合、低価格帯の商品を扱う店舗などでは、送料と原価の合計が商品代金を上回り、損失を生むことが想定される。それ以外の店舗でも、配送先が遠方になるにつれて送料負担が大きくなると、利益を圧迫する可能性がある。コスト吸収を目的に値上げをした場合は、客離れが起きる恐れもある。
こうしたの悪影響があるにもかかわらず、楽天が出店者の同意を得ないまま送料無料化に踏み切ることについて、楽天ユニオンは「独占禁止法で禁じられている『優越的地位の乱用』に当たる」と捉えている。そのため、署名と措置請求書を提出し、公取委に楽天への調査・指導に動いてもらう考えだ。
勝又代表は取材に対し、「楽天が送料を1円も負担しないのは、通販の出店企業としては納得できない。(値上げなどをすると)お客が逃げてしまうため、店舗へのダメージが大きい。昔の楽天市場に戻ってほしい」と思いを語った。
楽天ユニオンは、楽天が計5日という短期間(18年11月24〜28日)に行った実証実験の結果を根拠に、送料無料化が消費者のメリットにつながると公表していることも批判した。楽天に実験の妥当性などを問い合わせたものの、回答を得られなかったため、さらなる信頼低下につながったと説明している。
楽天市場からは抜けられない
楽天ユニオンは、楽天の施策に対抗すべく、約200社の出店者が19年10月に立ち上げた団体だ。20年1月時点での会員数は約340社で、それ以外に約150社から参加申請が届いているという。
送料無料化だけでなく、(1)「楽天アフィリエイト」の出店者負担額を1%から8%に引き上げたこと、(2)出店者に「楽天ペイ」導入を強制したこと、(3)規約違反した出店者に点数を付与し、一定の点数に達した場合に高額の罰金を課していること――なども問題視しており、これらの是正を求める署名も併せて公取委に提出した。
楽天の方針に猛反発する同団体だが、参加者の多くが、売上の多くを楽天市場に依存していることから、ヤフーやアマゾンジャパンが手掛ける他のECサイトに移籍することは難しいという。今回、訴訟の提起ではなく、署名の提出にとどまった理由も、楽天から出店契約を打ち切られることを恐れたためだ。
勝又代表は「売上に占める楽天市場のシェアが高いため、単に他のモールに移れば済む問題ではない。消費者の商品レビューがたまると有利になったり、『楽天スーパーポイント』ユーザーの買い物が売上に貢献する場合もある。消費者の情報を持ったままアマゾンジャパンやヤフーに行くことは難しい。楽天とともに成長したいが、こういう事態に発展してしまった」と不満をもらした。
楽天ユニオンの顧問弁護士である川上資人氏(早稲田リーガルコモンズ法律事務所)は、同団体による署名提出後に開いた会見で「(今回の件は)プラットフォーマーと事業者の力の不均衡という、極めて現代的な問題だ」と指摘。「公正な市場を形成するには、さらなる議論や新たな立法が必要かもしれない」(川上氏)との見解を示した。
「やるべきことはやった」(勝又代表)との考えから、同団体は今後、当面は公取委の動向を注視する活動にとどまるという。だが、将来的にはヤフーやアマゾンジャパンとの関係性に苦しむ企業を迎え入れ、楽天以外のプラットフォーマーとの団体交渉に臨む可能性もあるとしている。
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2020-01-22 08:45:00Z
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