コロナショックで派遣社員が大量に雇い止めされる「5月危機」が迫っている。6月末で契約が満了する人が多く、1カ月前の5月末に更新のタイミングが集中するためだ。すでに雇い止めされた人もいて「派遣切り」が横行しているが、国は実態を把握しようとしない。
厚生労働省によると、コロナ禍を理由に解雇・雇い止めされたのは見込みも含め、5月14日までに7428人。各地の労働局などが企業側から聞いた人数で「氷山の一角」だ。正社員と非正社員の区分はなく、大量にいるとみられる派遣社員の雇い止め人数などもわからない。厚労省は「内訳を調べることは考えてこなかった」(雇用政策課)などとしている。
一部の労働局はより詳しい情報を把握しており、長野県では4月24日までに見込みも含めて149人の派遣切りがあったという。厚労省は、都道府県ごとの数字は「正確性に欠ける」(同)ことなどを理由に明らかにしない。
派遣切りはこれからさらに深刻になる。総務省の3月の労働力調査によると、144万人いる派遣社員の7割強は雇用期間が限られている。「1カ月以上~3カ月以下」が39万人と最も多い。企業では派遣社員の契約を4月から始め、四半期決算にあわせて3カ月ごとに更新するのが主流だ。
更新を重ねてきた派遣社員らを雇い止めする場合、派遣会社は30日前までに本人に通告しなければならない。企業の経営は全体的に悪化しており、5月末のタイミングで通告が一気に増えそうだ。
厚労省はリーマン・ショック後の2008年11月に非正社員の状況を調べた。その結果、09年3月までに派遣社員約2万人を含む約3万人が解雇・雇い止めになる見込みだとわかった。約1カ月後の調査では派遣約5万7千人、全体で約8万5千人にふくらんだ。派遣ユニオンの関根秀一郎書記長は「リーマン・ショックは製造業の派遣社員への影響が大きかったが、今回は様々な業種への広がりが予想される。国はもっと実態を調べるべきだ」と指摘する。
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2020-05-17 10:35:44Z
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