週明け7日の東京株式市場は、引き続き買いが手控えられ日経平均は続落したが、下げ幅は115円安にとどまり、前週末に連日にわたる米国株波乱を目の当たりにした割には底堅い動きだったともいえる。米国株市場は前週3日の木曜日にNYダウが一時1000ドルを超える暴落で大引けは800ドルあまりの下げ。これで立ち直ればまだしも、前週末4日も一時630ドルと続急落となった。大引けは160ドル安まで戻したものの久々のパニック的な売りに晒された。
ハイテク株比率の高いナスダック総合指数については更に激しさが加わる。前週3日に一時700ポイント近く下に突っ込み、大引けは600ポイント弱の下落。前週末は一時580ポイントあまりの下げで、大引けは144ポイント安まで戻したものの、一時1万875まで売り込まれた。率からすればNYダウをはるかに超える下げだ。米国株の暴落は給付金トレーダー、あるいはスマホトレーダーとも言われるロビンフッダーの“狼狽”が反映されたともいうが、それは下げの本質ではないだろう。もっとも、ナスダックの苛烈な下げも、下ヒゲはつけたものの終値で25日移動平均線上にとどまったことで、かろうじて波動転換を印象づける段階には至っていない。
きょうはソフトバンクグループ<9984>の下げがかなりきつい状況で、大引け段階で日経平均を1銘柄で97円も押し下げた。つまり、ソフトバンクG1銘柄で日経平均の下げ分をほとんど肩代わりしたような状況に等しい。東証1部の値上がり銘柄数が値下がり数を460も上回っていることが、実態とカイ離した相場を裏付けている。ソフトバンクGは前週末4日に米ウォール・ストリート・ジャーナルや英フィナンシャル・タイムズなど海外主要メディアが、「オプション取引でコール(買う権利)を40億ドル分購入していた」と伝えた。ソフトバンクのオプション取引が米ハイテク株急騰のすべてということではなく、同社の投資行動はその断片に過ぎないと思われるが、それでもこの報道はかなりのインパクトがあった。ソフトバンクGは一時500円を超える下げで、5825円まで売り込まれ、この瞬間に時価総額を前週末から1兆円近くも吹き飛ばした勘定だ。
ただし、見えてしまえば納得する部分も出てくる。「この(ソフトバンクのコール買いの)話が出たことでナスダック指数の下げに歯止めがかかる可能性もある」(国内ネット証券ストラテジスト)という声もあった。きょうの日経平均は下値抵抗力を発揮したが、これには今晩の米国市場がレーバーデーに伴う休場であることも関係しており、休場明けのナスダックの動きを確認せずに、ヘッジファンドもきょうの日本市場への売りは仕掛けにくい。
とはいえ、ジャブジャブの資金に支えられた流動性相場も死角があることを、前週の米国株市場の波乱が教えてくれた。好事魔多しというが、くしくも日経平均がコロナショックによる急落前の水準を回復した日、それと同じ日付で米国株市場が暴落する羽目となり、視界が一瞬にして変わるとはこういうことかと、痛感させられる。
しかし、個別株は元気だ。菅官房長官の発言一つ一つがあたかも国策始動のように受け取られる。きょうは「デジタル庁」創設への言及が、DX関連株を突き動かした。マイナンバー周辺株にも連想が働き、ITbookホールディングス<1447>がストップ高したが、それに連動してクロスキャット<2307>も値を飛ばした。まだ、おとなしいところではキャリアリンク<6070>やニーズウェル<3992>などもマークしたい。
また、きょうはIOC調整委員長の東京オリンピック開催発言が伝わったことを受けて「五輪関連株」にも瞬く間に物色資金がなだれ込んだ。セレスポ<9625>がストップ高、サニーサイドアップグループ<2180>や博展<2173>も一時値幅制限いっぱいに買われるなど、販促支援やイベント関連が値を飛ばした。この流れの延長で穴株を探せば駅探<3646>あたりか。このほか、台風対策関連(国土強靱化)では日本コンクリート工業<5269>や日本ヒューム<5262>などにも注目しておきたい。
日程面では、あすは7月の家計調査、7月の毎月勤労統計(速報値)、4~6月期GDP改定値、8月の景気ウォッチャー調査など。海外では、4~6月のユーロ圏GDP確報値、7月の米消費者信用残高など。
(中村潤一)
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2020-09-07 08:34:00Z
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