【ワシントン=塩原永久】トランプ米政権が中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)への禁輸措置に踏み切った。同措置を昨年受けた中国の同業大手は数カ月で経営危機に陥った。ファーウェイは中国政府が重視するハイテク産業の看板企業。米政府は華為を狙い撃ちにした禁輸を交渉カードに、貿易協議で中国を揺さぶる構えだ。一方、禁輸はファーウェイを取引先とする米企業には打撃で、米経済界には懸念材料ともなる。
ロス米商務長官は15日の声明で、ファーウェイが「世界最大の通信機器の生産者」と説明した。中国政府の肝いりで、第5世代(5G)移動通信システムでも世界の先頭に立ったファーウェイに照準を絞り、打撃を与える思惑がにじむ。
米国は貿易協議で、ファーウェイなどハイテク企業への産業補助金の撤廃を中国に求めた。合意寸前だったが、今月に入って事実上決裂。トランプ米大統領は「中国が約束を破った」として、中国からの一部輸入品への制裁関税を強化した。
米政府は昨春、中国の中興通訊(ZTE)との取引を米企業に禁じ、主要部品が調達できなくなったZTEはすぐ経営危機に追い込まれた。トランプ氏はZTEへの禁輸解除をちらつかせ、協議を優位に進めた。
トランプ氏は6月下旬に大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議で、中国の習近平国家主席と会談する意向だ。ファーウェイカードを駆使し、首脳会談までの早期決着を狙うとみられる。
ムニューシン米財務長官は15日、議会で「近い将来に北京に行くだろう」と述べ、中国と早期に交渉を再開させる考えを示した。
一方、半導体大手クアルコムなど、ファーウェイに製品を供給する米企業も多い。華為の米企業からの購入額は年間100億ドル(1兆1千億円)に達するとの試算もあり、華為向けの出荷が途絶えれば米企業にも逆風だ。
また、経営体力が弱い米国の地方通信会社は安価な中国製に機器調達を頼ってきた。地方通信会社からは「政権の中国製締め出しに反対の声が出ていた」(米専門家)とされ、ファーウェイを狙った禁輸は米国にとり「もろ刃の剣」の側面もある。
https://www.sankei.com/world/news/190516/wor1905160045-n1.html
2019-05-16 12:17:00Z
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