ソフトバンクは、既存の料金体系を見直すのと同時に、LINEを生かしたオンライン専用の新ブランドを追加する。ソフトバンクブランドは、得意とする大容量プランに磨きをかけ、メリハリプランの容量を無制限化。Y!mobile(ワイモバイル)は料金プランをシンプルなS/M/Lの3本立てに戻しつつ、5Gに対応させる。これらに加え、LINEモバイルをソフトバンクの100%子会社化し、MNOとして新たなブランドでのサービスを提供する。
新ブランドのコンセプトは「SoftBank on LINE」。「オンライン」と「LINEで」を意味する「on LINE」のダブルミーニングだが、その名の通り、契約やサポートはLINE上で提供する。料金は20GB、2980円(税別、以下同)。ここには5分間の音声通話定額も含まれる。金額やデータ容量を見れば分かる通り、ドコモの新料金「ahamo」に対抗するブランドだ。一方で、eSIMを提供したり、上記の通り契約やサポートはLINE上で行ったりと、オンラインならではの差別化も図っている。
新料金を一挙に発表したソフトバンクだが、その狙いはどこにあるのか。代表取締役副社長執行役員兼COOの榛葉淳氏に聞いた。また、ソフトバンクについては同ブランドを統括する常務執行役員の菅野圭吾氏が、Y!mobileについては常務執行役員の寺尾洋幸氏がコメントを補足している。
分かりづらいところを反省した
―― 新料金で個人的に驚いたのは、きちんと正価を訴求した上で、シンプルだったところです。ahamo発表後は、より厳しい目が向けられるようになり、KDDIが炎上するといったこともありましたが、そういった点は意識されたのでしょうか。
榛葉氏 この1カ月の空気というところではありませんが、われわれももともとは(期間限定の割引を)良かれと思ってやっていました。お試しいただくのだから半年間だったり、5Gが広がるまでの1年間だったりと割引をしていましたが、最終的には、お客さまやネットの声を受け、やはり分かりづらいところは、真摯(しんし)に反省すべきだと思いました。
今回は、大きく3つのブランドを正式にリニューアルしています。そのため、1回聞いただけで、そらで言える範囲はどんなところなのかは議論を重ねました。半年間や1年間という割引は、確かにその期間は安くなりますが、逆に言えば途中から金額が上がってしまう。お客さまの目が、どうしても金額が上がってしまう方に行ってしまうため、それを一切なくそうというのがありました。
一方で、値引きはあります。自宅にはテレビやPCやゲーム機があり、それが固定のブロードバンドにつながっています。もしソフトバンクのブロードバンドとスマホを使っていただけるのであれば、それなりの形で還元したい。これは従前から支持もあり、ポジティブな評価をいただけていました。ご家族での割引も、複雑にならないようにしています。1人あたりの定価を出させていただき、そこからシンプルに固定と家族で割り引くということを、複雑にならないようにするというポリシーで作ったらどういう料金体系になるのかは考えました。
―― 逆に、Y!mobileについては、音声通話定額がオプションになりました。
榛葉氏 お客さまの選択肢を広げています。セットの方がいいというお客さまがいないことはないのですが、どちらがいいかを選んでいただけるようにしました。
寺尾氏 競争環境も踏まえると、(音声通話定額が付いたプランには)半年割引のような、期間限定割引が入っていました。新プランでシンプルにするには、音声通話定額を外さないとなかなか難しいというのはありました。また、音声通話は使わないお客さまも出てきています。そのため、オプションを足せば同じようになるよう仕上げています。
eSIMはソフトバンクとY!mobileでも検討
―― SoftBank on LINEは、これまでの店舗を前提にした仕組みと抜本的に異なります。ドコモがahamoの発表をしてから、まだ1カ月たっていませんが、そんなに短期間で対抗できるものなのでしょうか。もっと前から仕込んでいたということでしょうか。
榛葉氏 そこはご想像にお任せします(笑)。2021年3月1日のLINEとの統合は大きなイベントです。公取などともいろいろありましたが、LINEとどうシナジーを出していけるかは、Zホールディングスだけでなく、全社で点検しました。いろいろなアイデアを出しながら、絞り込んでいます。
―― eSIMについてはSoftBank on LINEだけなのでしょうか。他はいかがですか。
榛葉氏 前向きに検討をしていますが、まずはSoftBank on LINEになりますね。
寺尾氏 端末の販売もある店舗の場合、物理SIMの方がオペレーションも簡単で、eSIMのメリットが少ないというのもあります。逆にオンラインだと、eSIMのメリットは大きい。eSIMとeKYCを組み合わせることで、SIMカードを郵送する時間が必要なくなるからです。それぞれのブランドのお客さまに合わせて最適なものを提供していきますが、eSIM自体はソフトバンクとY!mobileの両方で検討していきます。
―― ただ、国際ローミングがどうなるかなど、細かい点が発表されていません。
寺尾氏 細かいスペックは、今詰めています。もう少しお時間をいただいてから発表したい。ただし、ああいうふうな形(ahamoのような、提供国を絞っての無料化)にはなりません。国際ローミングはソフトバンクやY!mobileのものがベースになると思います。
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データ無制限が可能になったが、テザリングは30GBまで
―― 一方で、ドコモは4Gと5Gが別プランで100円差になっているところなど、微妙に思い切りが悪いところがありました。ソフトバンクは全プランで4G、5Gの両対応です。こちらについては、どういった判断をされたのでしょうか。
榛葉氏 大きな判断でした。冒頭の質問にも通じますが、やはり“面積”は必要です。これで魅力を感じていただき、ソフトバンクブランドのメリハリ無制限に興味を持ってお越しいただけるようになれば、(5Gの追加料金を取らなくても)十分対応していけると判断しました。
―― 無制限に関しては、インフラ側のキャパシティーも必要になります。このタイミングで提供できるようになった背景を教えてください。
榛葉氏 確かにメリハリプランは比較表だと50GBですが、動画の見放題があるので、実質的には無制限に近いものでした。あの期間にユーザーさんのビヘイビアー(行動)を見て、気を付けなければいけない項目は何なのかを、実地で勉強してきました。宮川(潤一CTO)の部隊とも、何度も打ち合わせをして、こういうことであればと提供できることになりました。メリハリプランで実態を把握できたのは大きかったと思います。
―― ただし、テザリングには30GB制限があります。
寺尾氏 テザリングを最後に制限させていたのは、制限することで、結果的にスマホのユーザーに安く出せるからです。(テザリングでサーバ的に振る舞う機器をつないで)機械的な通信をされてしまうと、なかなかつらいところです。
―― 3ブランドでシンプルになりましたが、ミニフィットプランも残ると伺いました。この意義はどこにあるのでしょうか。
菅野氏 ミニフィットプランも5Gに対応していて、現状では継続して取り扱っていきますが、状況を見ながらここも変えていきます。そうは言っても、ソフトバンクブランドで小容量に入りたい方もいるため、その余地は残してあります。
ソフトバンクにとって「ブランド」とは?
―― 最後に、乗り換えの手数料がなくなり、ブランド間の移行が簡単にできるようになると、実質的な料金プランの1つになるという見方もあります。ソフトバンクにとって、ブランドとは? それを教えてください。
榛葉氏 プランの1つの上のレイヤーに来るもので、お客さまと一緒に作っていくものです。お客さまから見たとき、その名前(ブランド)だと、どういったカテゴリーのサービスが受けられるのかということが大切です。「1億総スマホ」時代には、単なるプラン名ではなく、ブランドを明確にして、お客さまと一緒に作っていき、お客さまのご支持をいただくことが大事だと思っています。
お客さまによって、使い方はさまざまです。大容量で、常に先進的な方はソフトバンクから検討するでしょうし、同じような通信のクオリティーで、しっかりしたサポートも必要でも、データ容量は小容量から中容量でいいという方にはY!mobileがメインブランドです。今まではこの2つのブランドでしたが、今後はここにSoftBank on LINEが加わっていくことになります。
取材を終えて:ソフトバンクの真骨頂を感じた
ドコモに対抗する形で、ソフトバンクも大容量プランの値下げと、オンライン専用ブランドでの20GBプラン新設に踏み切った。特に後者は、システムの構築だけでなく、販売代理店への根回しも必要になり、準備には時間がかかる。ahamoの発表から1カ月もたたずに対抗策を披露できたのは、いい意味でサプライズだった。料金体系がシンプルになったことも歓迎したい。このスピード感や市場の空気を読む力は、ソフトバンクの真骨頂と言えそうだ。
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2020-12-22 11:16:00Z
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