2023年末に第三者委員会の調査で174もの不正が見つかり、「不正のデパート」とまで揶揄されたダイハツ工業。3車種の「型式指定」が取り消されるなど、影響はさらに広がりを見せています。
国交省が3車種の型式指定を取り消し
国土交通省は2024年1月16日、ダイハツの商用車「グランマックス」、トヨタが販売する「タウンエース」、マツダが販売する「ボンゴ」のトラック3車種について、生産に必要な認証である「型式指定」を取り消すことを明らかにしました。
これら3車種についてダイハツは、衝突試験でエアバックを起動させる際に、衝撃をセンサーで感知させて作動させるべきところをタイマーで作動させており、悪質性が高いと判断されました。斉藤国交大臣は「自動車の認証制度の根幹を揺るがし、日本の製造業の根幹にかかわる」と厳しく批判しました。
「型式指定」が取り消されると、生産や出荷が事実上できなくなります。「型式指定」の再取得には数か月以上を要すると見られ、ダイハツはこの3車種を生産できません。
長引く生産停止、2月中に生産再開できるか
そもそもダイハツは、23年12月の不正公表後、国内全工場での24年1月末までの生産停止を決めています。不正の対象は64車種にも及んでおり、現在生産されているものについては、国交省による安全性の検証が終わらなければ、生産・出荷ができないからです。
国交省は19日、ようやく5車種について、安全基準に適合していると発表しましたが、ダイハツの関係者からは、2月中の生産再開は難しいのではないか、という悲観的な声が聞こえてきます。
関係する会社への影響は深刻に
この間、ダイハツ車を販売している全国3万店では、事実上、ダイハツの新車が販売できない状態になっています。ある販売会社は、出荷がさらに遅れた場合に備えて手元資金を厚めに積むといった自衛策に奔走していると明かしました。
部品を納入するサプライヤーへの打撃も深刻です。帝国データバンクによれば、ダイハツと取引のある企業は全国8000社以上あります。ダイハツはサプライヤーへの補償を行う考えを示しており、その話し合いも始まっているようですが、2次下請け、3次下請けにまで補償が行われるのか、行われるにしても時間がどれだけかかるのか、依然不透明です。
生産停止が長引けば、顧客のダイハツ離れが進むだけに、生産再開したとしても、これまでと同じだけの納入額が確保できるか、不安が募ります。
ダイハツの事業は「軽」に絞り込みか
ダイハツの親会社であるトヨタ自動車の佐藤社長は16日、「ダイハツの経営体制を見直すべき」と明言しました。国交省が16日に、抜本的な改善を求める「是正命令」をダイハツに出したことを受けたもので、そうした経営改善策や再発防止策が生産再開の前提になった形です。
同時にトヨタの佐藤社長は、「身の丈を超えた負担がかかっていたのであれば、事業領域を定める必要がある」と述べて、ダイハツの事業を軽自動車に絞る方向で検討する考えも示しました。
2014年以降、ダイハツはトヨタの小型車戦略を、開発・生産の両面で担う存在でした。2022年度のダイハツの世界総生産台数は178万台。そのうち軽自動車は63万台に過ぎません。生産台数が半分以下になれば、企業の姿は全く違う形にならざるを得ません。
不正のツケはあまりにも大きく、ダイハツの存亡がかかっているだけでなく、トヨタグループのあり様にも変化をもたらしそうです。そして何より、「メイド・イン・ジャパン」というブランドを大きく傷つけるものとなりました。
播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)
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2024-01-20 05:00:00Z
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