ダイハツ工業の認証不正を巡り、国土交通省がトラック3車種について、量産に必要な「型式指定」を取り消す手続きを始めた。処分が決まれば、消費者に身近な小型車では初の措置となる異例の事態だ。ダイハツは再取得を目指す方針だが、国交省の調査では新たな不正が判明し、生産再開のめどは立たない。自動車メーカーとしての信用失墜は避けられず、販売店や取引先にも動揺が広がる。
16日夕、国交省で取材に応じたダイハツの奥平総一郎社長は「国の認証制度を
不正の原因については「こなしうる仕事量に対し、過度に詰めすぎ、硬直的なスケジュールを変えられなかった」と述べ、「そういった環境や風土は経営が醸成してきた」と改めて経営陣の責任を認めた。1か月以内に再発防止策を国交省に提出するという。
対象となるトラック3車種の2023年1~11月の国内販売台数は約6200台だった。ダイハツの年間国内生産(22年度は約87万台)に占める割合は小さいが、ユーザーは電気工事や配送業などに携わる中小企業や個人事業主が多い。
ダイハツ本社の営業担当者は「仕事で日常的に使われており、信頼性こそが重要だ。型式の取り消しとなれば、影響は大きい」とうなだれた。
親会社のトヨタ自動車、供給先のマツダの信用も傷付けた。マツダは「不正の影響が弊社にも及び、誠に遺憾。今後の対応はダイハツと協議する」とした。
型式取り消しとなれば、日野自動車、豊田自動織機に続き3社目。日野はトラックやバス向け、豊田自動織機はフォークリフト向けのいずれもエンジンが対象だったが、ダイハツには一般ユーザーも多く、影響はより深刻と言える。
国交省の調査では新たな不正が判明しており、今後、対象車種が拡大する可能性もある。経済ジャーナリストの井上久男氏は「一般ドライバーに人気のタントやミライースなどの乗用車に取り消しが及ぶ事態となれば、ダイハツ存亡の危機になりかねない」と指摘する。
兵庫ダイハツ販売神戸店(神戸市)は広告での集客や新車販売ができず、中古車販売や車検対応でしのぐ。毎年恒例の初売りも見送り、店舗には「乗り続けても大丈夫か」と不安の声が寄せられている。川瀬祐司店長は「コロナ禍を経て、ここから巻き返しという時期に残念だ。安心して乗ってもらえるよう信頼回復に努めたい」と話した。
兵庫県にある部品メーカーの担当者は「早く生産を再開してほしい。稼働停止が長引くと思うと暗い気持ちになる」と訴える。
東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリストは、出荷停止や今後の補償などでダイハツには少なくとも1000億円規模の損失が見込まれると指摘。リコール届け出の指導を受けたこともあり、「不安に思う消費者は多く、速やかな対応が必要だ」と話した。
トヨタ自動車の佐藤恒治社長は16日、東京都内で記者団の取材に応じ、子会社のダイハツ工業について、1か月後をめどに役員の刷新を含めた経営体制の見直しを検討する考えを明らかにした。
佐藤氏は「大変重く受け止めており、不正行為が二度とないように抜本的改革に取り組む」と陳謝した。その上で、「軽自動車はダイハツのコア(中核)だと思う。(それ以外での)事業拡大で身の丈を超えた負担がかかっていたのであれば、事業の整理をしていく必要がある」と述べ、事業領域の見直しを進める考えを示した。近年、グループ内で不正行為が相次いでいることから、豊田章男会長が説明する場を検討しているとした。
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2024-01-16 23:31:34Z
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