アジア各国での新型コロナウイルス感染再拡大が日系自動車各社のサプライチェーン(部品供給網)に混乱を引き起こしている。これまで半導体不足による生産への影響を限定的な水準にとどめていたトヨタ自動車ですら大幅な減産を余儀なくされており、これまでの業界の調達や在庫管理などのあり方を根底から覆す可能性がある。
国内外の自動車関連メーカーの株価や車生産に使われる貴金属価格が一時、大幅に下落するなど影響が広がった今回の「トヨタショック」ではマレーシアとベトナムが震源地となった。両国では感染者の急増に伴いロックダウン(都市封鎖)などの措置が厳格に実施されたことで、製造業は不安定な操業を強いられている。
マレーシアは半導体製品の検査などを行う後工程では世界的に重要な拠点となっている一方、ベトナムは、自動車全体に電力を供給し、車の神経や血管とも言われるワイヤハーネス(組電線)で日本にとって最大の供給元でもある。コロナ禍がそれらの生産を直撃した。
半導体不足が悪化の恐れ、マレーシアのコロナ感染急増がアキレス腱に
スイスの国際経営開発研究所でディレクターを務めるハワード・ユー教授は、一見すると必要不可欠ではない部品が「生産システム全体を吹き飛ばすほど重要になっている。限られたサプライヤーが特定の地域に集中していることが理由だ」と述べた。
在庫などの無駄を排除し、生産効率を高めるトヨタの「ジャスト・イン・タイム生産方式(リーン生産方式)」は自動車業界にとどまらず世界中の企業で手本とされてきた。しかし、コロナ禍はそういったシステムの脆弱(ぜいじゃく)性を露呈させたとユー教授は指摘する。その上で、今後は複数の地域に供給元を持つことなどでサプライチェーンに少し余裕を持たせる努力が必要になると語った。
ワイヤハーネス
野村証券の桾本将隆アナリストらは8月20日付のリポートで、今回のトヨタの減産は半導体の後工程やワイヤハーネスといった「大半の自動車メーカーで使用されている部品の不足が原因で、業界全体の課題とみるべきだろう」と指摘した。
同アナリストらは、マレーシア政府が製造業企業に対しワクチン接種率に応じた稼働を認めると発表していることや半導体の後工程は「世界に分散し、他ラインへの移管も比較的容易なため、1カ月程度でマレーシア関連の減産影響を自動車メーカーでは克服できる」との見方を示した。
一方、自動車メーカーがコストを抑えながらワイヤハーネスの代替調達を進めることが容易に可能かは不透明だ。
同部品は組み立てに人手がかかる典型的な労働集約型の製品で、かつては日本の輸入元は人件費の安い中国がトップだった。その後、中国の人件費高騰に伴い生産移管が進み、20年はベトナムが約4割を占める最大の供給国となり、フィリピンがそれに続いた。
ベトナムの首都ハノイの東、ハイズオン省にある住友電気工業のワイヤハーネス組み立て工場は8月、従業員の感染が確認されたため地元政府から稼働停止を命じられた。同省の周辺地域の工業団地では4ー5月に深刻な感染拡大を経験しており、同様の事態を避けるため1人の感染でも厳しい措置が取られた。
同業で同じくベトナムに工場を持つ古河電気工業の広報担当者は23日の取材で、ロックダウンなどにより操業が計画通りにできていないと話していた。ベトナムに製造拠点を持つ矢崎総業でも一部生産に影響が出ている可能性がある、と日本経済新聞が21日に報じていた。
物流にも不安
ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生アナリストは、ワイヤハーネスは短期的な問題にとどまる可能性があるが、「あくまでコロナが収束することが前提」と語った。
吉田氏は、ワイヤーハーネスの製造ではベトナムやフィリピンには安い労働コストなどの優位性があるとした上で、サプライチェーンのBCP(事業継続計画)対策として自動車各社は供給元をより分散することも検討の余地があるとの見方を示した。
コロナ禍の影響は物流にも大きな影響を与えていることから、部品不足は今後より深刻化する恐れもある。
世界3位のコンテナ取扱量を誇る中国の寧波舟山港は先月、感染者が発生したため一時的に部分閉鎖された。中国の上海にある国際空港でも感染者が確認されたことで貨物便の一部に影響が出たため、マツダは8月24日から広島県と山口県にある国内2工場の操業を停止した。
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2021-09-01 23:22:00Z
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