米ドル/円は、153円台に急騰して定着しているように見える。
それでも当局が介入しない理由とは何か?
米ドル高の市況が、進んでいる。
米3月CPI(消費者物価指数)が市場の想定より高く、米金利の高騰をもたらしたため、米ドルが買われているのも当然の結果である。また当然のように、米ドル高の受け皿として、円は主要外貨のうちでもっとも売られている。
ゆえに、主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の多くは堅調に推移している。豪ドル/円にいたっては、2024年4月9日(火)に高値を更新していたばかりだが、豪ドル/米ドルの軟調があっても対円では堅調な推移を保ち、円の弱さを一層露呈させている。
要するに、米ドル/円の上昇が大きい、ということに尽きる。2022年高値(円の安値)を超え、153円台に「定着」しているように見える米ドル/円は、日本当局の介入なしではトレンドの修正が難しい、と多くの市場関係者が思っている。
ユーロ/米ドルの2022年安値といえば、同9月末の0.9535ドルだった。そして、執筆中の現時点では1.0712ドル前後なので、実に12%超高い水準にある。同じく米CPIのリリースを受けて急落してきたとはいえ、ユーロ安になったとは言い切れない。
ドルインデックスは、2024年年初来高を更新しているから、米ドル全面高と言いたいところだが、実情は、より複雑だと思う。
前述のように、ユーロなどの外貨が急落してきたが、円のように明らかなベア(下落)トレンドになっていない、あくまで弱含みな保ち合いの状況だとみる。
だからこそ、153円台に「定着」しているようにみえる米ドル/円に、日本当局が執筆中の現時点まで介入していないのだ。介入したくても、効果が限定的、場合によっては失敗してしまう恐れが大きいからだ。
言ってみれば米ドル全面高、すなわち、米ドル全体が買われすぎた局面ではないから、たとえ日銀でも米ドル売りの介入自体、リスキーな行為だ。この意味では、鈴木財務相が言う「G20で米ドル高懸念を議論」というのは、共感されないかもしれない。
介入を期待した日本の個人投資家の逆張りが、日銀の障害に?
米ドル/円は、一時的に155円台に上昇する可能性も
政府・日銀の逆張り(すなわち介入)が実るかどうかわからないのに、日本の個人投資家は逆張り(米ドル売り・円買い)に励み、152円を超えた時点ではむしろ一段と盛んであった、と統計上のデータが示している。政府・日銀に期待した行動であるが、皮肉にも、その行動自体が日銀の動きに対する障害となっている。理屈は前回のコラムをご参照いただきたい。
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル/円は一時151円を割り込んだが、上値指向が強い。今は「拮抗と均衡」を保った絶妙な水準!? 米ドル/円が介入なしに円安の流れを修正する可能性は低い! (2024年4月5日、陳満咲杜)
国際的な投機筋は、総じて順張りの米ドル買い・円売りなので、このままでは日本の個人投資家の敗北がみえてくる。
政府・日銀の介入があっても、恐らく米ドルの売りポジションが踏み上げられた後でないと、なかなか効かないから、一時的にせよ、米ドル/円は155円の大台にいったん乗せる可能性がある。
このような状況になれば、筆者が昨年(2023年)年末想定したレンジ(135円~150円)を大きく超え、筆者自身が反省しなければならない。しかし、円安が構造的であり、政府・日銀の介入があっても流れが修正できず、160円や170円とさらに円安の余地が拡大する、といった論調には到底、同意できない。
【※関連記事はこちら!】
⇒【2024年のFX予想】米ドル安の一段の加速は必然! 日銀の政策に過大な期待は禁物、米ドル/円の続落は間違いないが、想定を超えても下値は132円程度か(2023年12月21日、陳満咲杜)
むしろ逆だと思う。すなわち、想定より進んでいる円安自体は投機筋が仕掛けた結果であり、構造上の問題ではない。ここで言う投機筋は、日本の個人投資家の逆張りを含める。と言うのも、逆張りの結果がかえって円安の度合を増幅させた、あるいはこれから増幅させるからだ。
構造上の問題云々と叫ばれる時は、往々にしてトレンドの終焉に近い時期でもある。極端な例として挙げられるのは、やはり2011年10月末、円が史上最高値を付けた時点だ。
その時も、専門家の多くは「円高は構造的、修正できない」と語り、政府・日銀の介入があっても流れを阻止できないと論じていた。今の状況と真逆なので、当時の世論(円高亡国論云々で一般の人にまで浸透していた)がいかに間違っていたかは言うまでもない。
円安局面なら、似たような時期は1998年や2015年、2022年があった。「構造上の円安であり、危機的」とあおられていたが、その後、例外なく大きく修正された。
歴史は、繰り返すもの。今回も然りのはずなので、円安局面もそろそろ最終段階、すなわち「クライマックス」を迎えるだろう。
米ドル/円の吹き値は、逆張り筋が踏み上げられることを意味する。
クライマックスで吹き上がって終焉に向かうか
一方、このような論述をしていると勘違いされるのではないか、という不安もある。それはほかならぬ、ミセス・ワタナベさんが仕掛けている逆張りの行為を助長する恐れがあるからだ。
円安の最終局面なので、米ドル売り・円買いを仕掛けておけば、いずれ利益を取れる――このような考え方は、ゼロサムゲームの為替市場において、非常に危険だ。
このあたりの理屈を詳しく説明するには、為替取引の本質を一から説明しないといけないからここでは省くが、円安の最終局面だからこそ、往々にして逆張り筋の総撤退がないと終わらないことを強調しておきたい。
言ってみれば、クライマックスの段階においては、往々にしていったん吹き値があって、その後、終焉に向かう。米ドル/円の吹き値があれば、それはほからならぬ、逆張り筋が踏み上げられることを意味するから、一時的にせよ、米ドルが大きく買われる可能性がある。
仕掛けておけばいずれ利益を取れる、といった生半可な考えは、外貨預金ならいけるかもしれないが、レバレッジを効かせたFX相場においてまったくと言っていいほど通用しない。このあたりはやはり、勘違いしてはいけない。
クロス円も含め、本格的な底打ちまで、また、政府・日銀の介入(1回では済まないと思う)が効くまで、なお円の急落を警戒せざるを得ない。市況はいかに。
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2024-04-14 00:08:33Z
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