国民1人に10万円を配る「特別定額給付金」について、東京23区と全国主要8市の31自治体では6割の世帯で給付を終えたのは4自治体のみで、23区平均では3割にとどまっていたことが産経新聞の調査で分かり、大都市圏では膨大な事務作業に自治体職員が忙殺されている実態が浮かび上がった。申請数の多さに加え、申請内容の不備や銀行口座の記載ミスが目立ち、実際に給付金が届くまで本来の業務以上に労力がかかっている状況だ。
約8割の世帯に支給が完了した練馬区は、もっとも多い時期で155人の職員が対応に当たったといい、「早くに準備し、全庁挙げた総力戦で対応している」と話す。給付率が5割を超え、都内でも比較的スムーズに給付の進む港区でも、これまでに宛先不明で戻る数は約3千件、申請内容の不備は約4千件にも上る。
ある区の担当者は「代理申請による書類の不備が散見される」と指摘する。法定代理人や高齢者の親族による代理申請では、本人との関係性を証明する書類の提出が必要だが、担当者は「ルールがあまり浸透していない」と落胆する。
目黒区では、申請を受け付けた約11万件のうち約9割が郵送申請を占める。オンライン申請への対応は順調に進んでいたが、郵送申請開始後は1日1〜2万件も届き始めた。同区の担当者は「一度に届く量が多すぎて作業が追い付いていない。1日でも早く届くよう作業を進めているが、社会の仕組み上、仕方がない」と嘆く。
区特有の事情もある。新宿区は区民に外国人が多いことから、申請書類の不備があり、対応に追われたという。区で支出処理が完了しても銀行振込の際に、口座の登録名が本名と一致しないことなどから戻ってくることもあるという。
いずれの自治体もかなりの職員数を投入して対応に当たっているが、区への問い合わせは後を絶たない。世田谷区のコールセンターへの問い合わせは、1日1千〜2千件、区へも1日150件程度あるという。「給付がいつになるのか」「処理が遅い」など苦情もあるという。
品川区でも、区職員約20人が感染予防対策を実施した大部屋で作業を進めている。委託業者にも依頼し、24時間態勢で入力作業に当たっているが、コールセンターへの問い合わせは1日300件以上にも上る。
中野区は総世帯数約21万のうち約4万世帯から申請が届いていない。今後、申請期間が迫った場合は、1人暮らしの高齢者宅などを1世帯ずつ訪問することも検討している。「1世帯でも残っている限り、しっかりと対応してく」(担当者)としている。
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2020-06-23 12:09:00Z
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