【ベルリン=石川潤】欧州中央銀行(ECB)は22日開いた理事会で、金融政策の先行き指針(フォワードガイダンス)を変更し、より長く超低金利政策を続けることを約束した。8日に公表した金融政策の戦略検証で物価目標をこれまでの「2%未満でその近辺」から「2%」に修正し、物価上昇率の一時的な2%超えを容認したことを受けた措置だ。景気を支えるため粘り強く緩和を継続する。
公表文によると、ECBは物価が近く2%に到達し、その後もしばらくその水準にとどまると判断するまで、政策金利を現在の水準かそれ以下にとどめる。物価の基調の改善も確認する。さらに「一時的に物価上昇率が目標をある程度上回る」ことを容認する姿勢も示した。
ECBは現在、2023年まで1%台の物価上昇が続くとみており、超低金利政策は少なくとも今後数年は続く可能性が高い。これまでは、物価見通しが「2%未満でその近辺」の水準に収束していくのを見通せるまで超低金利政策を続けるとしていた。
ユーロ圏の物価上昇率は2%程度まで上がっているが、原油価格上昇などの要因が大きい。価格変動の大きいエネルギー・食品を除いたコアの物価上昇率は1%程度にとどまる。新型コロナウイルスのインド型(デルタ型)の感染拡大も景気の先行きに影を落としつつある。
世界の主要中銀では、金融緩和を粘り強く続け、一時的な物価2%超えを容認することが主流になっている。日銀は物価が2%を超えるまで金融緩和を続ける「オーバーシュート型コミットメント」をいち早く導入。米連邦準備理事会(FRB)も20年8月に「平均物価目標」を採用した。
企業や家計が「物価はどうせ上がらない」と思い始めれば、消費や投資が鈍って賃金も上がらなくなり、本当に物価が上がらなくなってしまう。デフレや低インフレの泥沼から逃れるためには、中央銀行が思い切った緩和姿勢を示し、人々の物価上昇期待を高める必要があるためだ。
ただ、こうした積極的な金融緩和は、緩和縮小が後手に回るリスクと裏表だ。すでに日米欧の中銀の総資産の合計は20兆ドル(2200兆円)を大きく上回り、08年のリーマン・ショック時の4倍以上に達している。
危機の局面では潤沢な資金供給が欠かせないが、あふれたマネーは株式や不動産、低格付け債(ジャンク債)などの価格を実力以上に押し上げかねない。超低利の資金が効率の悪い投資やゾンビ企業の延命に向かえば、中長期的な国の成長力をむしばむことにもなる。
足元の物価上昇は一時的というのが中央銀行の共通見解だが、緩和縮小の遅れが景気・物価の過熱につながる恐れも否定はできない。政府の資金調達は事実上の中銀依存が進んでおり、財政規律が失われつつあるとの指摘もある。
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2021-07-22 12:12:40Z
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