日経平均株価がバブル経済期の1989年につけた過去最高値を更新した。しかし、物価高に賃金が追い付かず、多くの国民に株高の高揚感はない。銀行マンとして日本経済の浮沈を経験し、その教訓を経済小説で描いてきた作家の江上剛さん(70)は今の状況を「熱狂なきバブル」と憂える。江上さんの目に映る日本経済の現状とは――。
<記事の内容>
・銀行人事部でみた“バブルの暗部”
・金融危機、貸し渋り、デフレの悪循環へ
・「バブル期は未来を信じていた。今は…」
仕事、銀座、ディスコ――24時間戦った
株価がバブル期の最高値をつけた約34年前、第一勧業銀行(現みずほ銀行)の銀行マンだった。当時、栄養ドリンクのCMキャッチコピー「24時間戦えますか」が流行し、多くのサラリーマンがそれを地で行く生活を送っていた。
「午前2時、3時まで残業代を付けずに働き、帰りのタクシー待ちも兼ねて銀座で上司と飲む。その翌朝早くに出社するのが当たり前」だった。それでも「多くのサラリーマンは仕事を頑張れば毎年給料が上がっていく実感があった。明るい未来を信じていた若い世代がディスコに行き、踊り騒いでいた」と振り返る。
バブルの熱気とは何か。江上さんは「戦後の高度経済成長期を経て、日本が世界を席巻する『ジャパン・アズ・ナンバーワン』の活気、ついに米国を抜いたという爆発的な思いが国民に広く共有されていました」と語る。
株価だけでなく土地の値段も急速に上がり、週刊誌では「東京・山手線の内側の土地を売るだけでアメリカ全土が買える」と特集するほど日本経済は熱狂に包まれていた。87年に上場したNTT株に投資し、その後の値下がりで損失を受けた人もいたが「多少失敗しても取り戻せる雰囲気があった。それは若さのエネルギーがあったからでしょう」。
89年12月29日の大納会で株価が3万8915円を付けたときも、…
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2024-02-28 06:45:00Z
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