テック産業を巡る米中両国の攻防が新たな局面に入った。トランプ米大統領は7月31日、中国発の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の「利用禁止」を打ち出した。ティックトックは中国発の世界的なサービスとして勢いを伸ばしてきただけに、今後、中国政府が何らかの対抗策を打ち出す可能性がある。
米トランプ政権は8月1日にも「ティックトック禁止令」の具体策を公表する見通し。ムニューシン財務長官は、外国勢による米国投資の可否を判断する対米外国投資委員会(CFIUS)が、ティックトックを運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)の米国事業を審査していると明らかにしている。
バイトダンスは米バージニア州でデータセンターを運営する。CFIUSの審査対象で、個人情報の収集などを「安全保障上の問題がある」と判断すれば、米国事業を切り離すよう大統領に勧告できるとみられる。
「エンティティー・リスト」に加えた華為技術(ファーウェイ)のように米商務省がバイトダンスに「禁輸」措置を発動する可能性もある。禁輸措置が発動されると、バイトダンスは米企業と取引ができなくなる。米国内のスマートフォンでティックトックのアプリが使えなくなり、利用禁止措置と同じ効果がある。
複数の米メディアは米政権がティックトック事業を担う米子会社を売却するようバイトダンスに命じ、米マイクロソフトが買い手に浮上していると報じていた。だがトランプ氏は米企業によるティックトック買収を支持しない考えを明確に示した。
中国当局の影響力の大きさを不安視し、米軍は早々にティックトックの利用をほぼ全面的に禁じている。
中国側は現時点で公式な声明を出していない。ただ中国が報復措置に動く可能性は高い。中国外務省の報道官は7月29日に「(ティックトックについて)米国の議員は事実ではない批判を繰り返し、中国に悪意を向けている」としていた。
中国はすでに米国発のフェイスブックやユーチューブ、グーグルの検索サービスの国内利用を厳しく制限している。中国ではファーウェイが米国による制裁対象となった際、米アップル製品の不買運動が起きた。中国では外交関係が悪化した国の企業に対して不買運動が度々起きており、ティックトック利用禁止で中国に進出する米企業が今後、標的にされる可能性がある。
バイトダンスの関係者は「海外での事業環境が目まぐるしく変化しており、様々な選択肢を検討している最中だ」と明かす。
対立がエスカレートする可能性もある。米国では、対中強硬派のナバロ大統領補佐官が、中国の騰訊控股(テンセント)が提供する対話アプリ「微信(ウィーチャット)にも断固たる措置を検討している」と明言する。米国務省のキース・クラック次官(経済成長・エネルギー・環境担当)も日本経済新聞などのインタビューで「子どもたちがスパイ活動をされる可能性があり非常に危険だ」と述べた。
ウィーチャットは世界で12億人の利用者を抱える。決済や電子商取引(EC)など様々な機能を持つ「スーパーアプリ」だ。
利用者は中国人が中心とはいえ、ティックトックと同じように米国内での利用が禁止されれば、影響は大きい。中国でサービスを提供している米企業に対して、中国が一段と締め付けを強めるなど負の連鎖が広がる恐れがある。ITサービスの利点は国境に関係なく利用できることだが、米国と中国という巨大市場で二分化が進む。
さらに米政権がティックトックやウィーチャットを排除すれば、同盟関係にある日本や欧州勢も追随を求められる可能性がある。(ワシントン=河浪武史、上海=松田直樹、渡辺直樹)
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2020-08-01 09:00:00Z
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