米Appleは6月3日(現地時間)、カリフォルニア州サンノゼ市で開発者向け会議の「WWDC 2019」を開催。基調講演ではiPhone向けOSと共通ブランドとなっていた「iOS」から、iPad向けOSが独立して「iPadOS」となるなど、多くの発表が行われた。
本来の「開発者向け会議」という性格からすれば、「Mac Pro」の久々の刷新や6K解像度HDR対応の高品位ディスプレイ「Pro Display XDR」、Apple向け各種プラットフォームのユーザーインタフェース設計を容易に行える「Swift UI」などが、基調講演の会場で最も湧いた話題だが、本誌(ITmedia PC USER)の視点では「iTunesがなくなる」ことに戸惑う声も大きいのではないだろうか。
ご存じのようにiTunesはiPhone、iPadおよびiPodとのデータ同期を行うツールとして、MacだけでなくWindows PCでも利用されてきた。秋にリリース予定の新macOS「Catalina(カタリナ)」ではiTunesが搭載されなくなると聞いて、先行きを不安に感じている読者もいるかもしれない。
しかし、一連の発表はAppleの製品ラインにおけるプラットフォームの統合を示唆しており、iTunesが廃止される理由も、提供するサービスやiOSなどとの整合性を重視していることが伺える。
言い換えれば、Apple製品向けサービスやiPhoneおよびiPadとの統一感を必要としないWindowsでは、iTunesを廃止する意味がない。
macOS版iTunesは廃止されたのではなく「必要とされなくなった」
今年3月、Appleは雑誌購読も行える「News+」、定額料金で大作ゲームを遊べる「Apple Arcade」、独自制作のプレミアム番組や映画を楽しめる「Apple TV+」などを発表していた。Appleは依然、ハードウェアメーカーではあるが、同時にさまざまなメディア配信サービス事業者でもあり、それを自社製デバイス向けに提供している。
こうしたサービスは、iOS向けアプリの機能とのセットで開発されており、例えば「Apple Music」はその代表格だろう。Apple Musicはアプリとサービスの組み合わせで体験の質を高めている。
この話はiTunesとはあまり関係ないように思えるかもしれないが、iTunesの歴史を振り返れば、さまざまな進化と市場環境が変化していった中で、多様な機能が詰め込まれたiTunesは、Appleが提供するサービスを最適に楽しむのに良いアプリとはいえなくなっていた。
そもそも、iTunesはCDから音楽データを読み込んでMP3でエンコードし、iPodに同期して楽しんだり、オリジナル構成のCDを作ったりするための道具だった。それがiPhoneやiPadの同期、映画やテレビ番組のダウンロード、iOS向けアプリのダウンロードやアップデートなどにも利用されるようになったのは、iPhoneが登場したころはデジタルメディアの中心が「パソコンだった」からに他ならない。
ところがその後、中心となるデバイスはiPhoneになり、現在はiTunesがなくともiCloudを通してiOS機器単独でも使えるようになっている。こうした中で、iTunesをmacOSに搭載し続ける理由はなくなってきたといえる。
iOSとmacOSの互換プロジェクトでiTunesは不要に
2018年からiOSアプリをmacOSに簡単に移植するためのプロジェクトがスタートし、幾つかのApple純正アプリがmacOS上でも動作するようになっていた。Apple News+や録音アプリなどはその端的な例だが、これらはあくまでApple社内で試験的に使われていたものにすぎない。
しかし、macOS Catalinaでは正式にiOSアプリをmacOS上で動かすための「Project Catalyst」の成果が組み込まれ、サードパーティーも利用可能になる。これまでの経験を生かして互換性を高めることに成功したからだ。
これに先立つ形でApple自身がiOSアプリをmacOS向けに移植するのが、「Apple Music」「Podcast」「Apple TV」だ。それぞれのiOS版をmacOS向けに移植する。これらAppleが提供するサービスと連動するアプリがMacの上で動くのであれば、そもそもiTunesは不要になる。
無論、iCloudと連携をするとしても「母艦」としてMacを使いたいニーズはあるだろうが、そちらは本質的にはmacOSのファイル、デバイス管理を行う「Finder」に統合されるべきものだろう。実際、CatalinaではFinderのサイドビューにiPhoneなどのデバイスが表示され、同期やコンテンツの管理が行えるようになる。
Apple製品の中で、最も市場への影響力が大きいiPhoneを基準に考えるならば、このようにサービスやコンテンツを扱う窓、体験の質を統一する方が得策だろう。
「iTunes廃止」と書くと刺激的に感じるかもしれないが、iOSとmacOSの互換性が高まった結果、iTunesが役割を終えたのだと考えれば自然な流れといえる。
非Apple機器以外では廃止する意味はない
一方でAppleのプラットフォームではないMicrosoftのWindows OSで、iTunesを廃止することはないだろう。少なくともApple広報によると、現時点においてWindows版iTunesの開発中止などの情報はないという。
音楽ダウンロード配信や映画・テレビ番組のダウンロード、ストリーミングプラットフォームとして、iTunesは重要なプラットフォームとなっているため、Windows版を廃止してしまうと、Apple以外のコンテンツパートナーにも影響が及ぶという理由もある。
もし「iTunes for Windows」を廃止することがあるとすれば、macOSと同様にApple Music、Podcast、Apple TVの各アプリに加え、iPhoneおよびiPadと連携するための同期ツールを別途提供しなければならない。
iOSは既にパソコンとの連携なしでも成立するようになっており、以前ほど「母艦としての意味はないのでは?」と考えれば、今後、更新頻度は下がっていくかもしれない。しかし提供が終了することはないだろう。
Mac Proは「本来の形」に回帰
さて、WWDCの会場ではMac Proのハンズオンコーナーが設けられ、さまざまなデモを受けることができた。
詳細なスペックや拡張性などはAppleのWebサイトに譲りたいが、「Power Mac G5」や初代「Mac Pro」をほうふつとさせる原点に戻った優れたアップデートだと感じる。
最大限のエアフローを確保し、可能な限りの拡張性を備え、余裕のある電源を採用。内部は一貫してモジュール化した設計とし、拡張する場合でも、故障した場合でも、素早く修理、あるいは拡張が行える。
一方、ディスプレイに関しては評価を保留したい。
最大1000nitsまでの表示が可能で「Display P3」に対応。10万対1のコントラスト比を実現しているというが、このコントラスト比は直下型LEDバックライトを分割制御する技術(ローカルディミング)と組み合わせた結果出せるものだ。パネル単体のコントラスト比は、一般的なIPS液晶パネルと大差ないと考えられる。
ハンズオンの会場では、動画は平均輝度の明るい映像が使われており、高輝度部の色彩感やピーク輝度の伸びは素晴らしく、白の面積が広い映像でもピークが下がらない。
しかし静止画のデモでは「ハロ」と呼ばれる現象(暗い部分にも光が回って明部の輪郭がにじむ現象)が見られた他、ローカルディミングと連動した画素ごとのゲイン補正が入るタイミングにハッキリとしたラグがみられた。また高輝度画素の周辺では、暗部階調の色相ズレや色再現域が狭くなる様子がうかがえる。
これらは液晶ディスプレイであることを考えれば当然のことで、静止画が動画よりもこれらの弱点が見えやすいことを考えれば、むしろ高品質だろう。ビデオ編集やHDRを活用した静止画撮影などでは十分ともいえる。
なお、基調講演内ではソニーの4K有機ELマスターモニターである「BVM-X300」よりも優れているといった訴求もされていたが、全く用途が異なるものなので、比較対象にはならないことは留意しておきたい。
関連記事
https://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1906/04/news086.html
2019-06-04 05:00:00Z
52781747631182
Tidak ada komentar:
Posting Komentar