日本銀行が半年に一度公表する金融システムリポートで、不動産業向け貸し出しが1980年代後半のバブル期並みの過熱サインを示した。金融機構局が17日公表した。
金融循環上の過熱感や停滞感を評価するため、14の金融活動指標の基調からの乖離(かいり)を色で識別したヒートマップで、不動産業向け貸し出しの対国内総生産(GDP)比が90年末以来、初めて過熱を示す「赤」となった。ほかにも、総与信の対GDP比や企業設備投資の対GDP比など赤に近づいている指標が幾つかあった。
同リポートは、地価の対GDP、不動産業実物投資の対GDPなど他の不動産関連指標は過熱でも停滞でもない「緑」のままで、「不動産市場の過熱感を示す指標に広がりはみられない」と指摘。不動産市場全体が「バブル期のような過度に楽観的な成長期待に基づく過熱状態にあるとは考えにくい」としている。
雨宮正佳副総裁は同日、衆院財務金融委員会で答弁し、「金融緩和の長期化もバブル発生の重要な要因」であり、「金融面の不均衡を含め、経済、物価、金融が抱える潜在的なリスクに十分注意を払いながら政策を運営していくことが重要だという、大変重要な教訓を得た」と指摘。そうした経験も踏まえ「政策運営に当たり重視すべきさまざまなリスクを点検する」と述べた。
同リポートによると、不動産業向け貸出比率を高める金融機関ほど「自己資本比率が低い傾向」もあると指摘。融資だけでなく、不動産投資信託(REIT)や私募REITなど不動産ファンド向けの出資も地域金融機関を中心に近年大きく増加しており、不動産市況の悪化局面では「貸し出しよりも大きく価値が毀損(きそん)し得る」と警告を発した。
さらに、大型案件が中心だったバブル期と異なり、不動産業向け融資の増加はREITや不動産ファンド、個人による貸家業など賃貸収入目的の中長期投資向けが中心で、中小企業や個人など「必ずしも損失吸収力の高くない借り手の比重が高いことにも留意が必要」と注意を喚起した。
金融機構局の亀田制作審議役は記者説明で、「借り手は不動産市場における空室率の上昇や賃料の下落など長期のリスクにさらされている」と指摘。人口減少が続き、世帯数も4、5年後は減少に転じると予想される中で、「将来の需要と比べ現在の不動産投資や不動産貸し出しが過大でないか、やや長い目で点検し続けていくことが重要だ」と述べた。
日銀は金融政策運営では2%の物価目標の実現を目指し、長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みの下で、REITを年間約900億円ペースで買い入れている。
(第2段落以降に発表内容を追加して更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-04-17/PQ32L56S972801
2019-04-17 05:13:00Z
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