―3万8000円台を一時割り込む、ここは売りか買いか―
17日の東京株式市場は日経平均株価が急反落、一時800円を超える大幅な下げで一気に3万8000円台を割り込む波乱含みの展開に見舞われた。ここ最近は上値が重く3万9000円を軸にもみ合い圏で推移していたが、きょうは攻防ラインとなっていた25日移動平均線を下放れる形となった。ここは買い場なのか、それとも一段の下値リスクに身構えるところか。今後の東京市場の動向について、ファンダメンタルズや需給など幅広い観点からの分析に定評がある市場関係者2人に意見を聞いた。
●「欧州発『財政不安』で相場のトレンドは転換も」
笹木和弘氏(フィリップ証券 リサーチ部長)
この日の日経平均株価の大幅安は、裁定買い残や信用買い残の解消売りに押された面もありそうだが、きっかけとなったのは、やはり欧州議会選挙で極右勢力が躍進し警戒感が高まったことだろう。特に、フランスでは下院議会を解散し選挙を行うことが発表された。極右政党が躍進し勝利した場合、ポピュリズムによるバラマキ政策も取られかねない。コロナ禍で膨れ上がった財政を健全化すべき局面なのに、更に財政拡大に向けた政策を取ることに対する不安は高まっている。
フランスに加え、イタリアやスペインなどの国債利回りが上昇し、各国国債を大量に保有する欧州の銀行株は売られた。日本の銀行なども欧州銀行の劣後債を保有しており影響は無視できない。
また、日本では円安対策として政府と日銀が緊密に連携することは「骨太の方針」でも打ち出される方向にある様子だ。今後、国内機関投資家は欧州債投資から引き揚げて国内債へシフトすることも予想され、また視線は更に米国の財政問題に向かうこともあり得る。為替は円高に向かい、円売り・日本株買いというポジションは閉じられることも考えられる。いまは、グローバルなおカネの流れが変わりやすいタイミングにあるのかもしれない。
こうしたなか、今後1ヵ月程度の日経平均株価のレンジは3万6000~3万8500円前後を予想している。トレンドは弱含みで調整色を強めることもあり得るだろう。
個別では、低PBRバリュー銘柄をベースとしつつ生成AIの普及に伴う電力対策などに絡む銘柄に注目したい。データセンターの電設工事に関連する住友電設 <1949> [東証P]、再生可能エネルギーを貯める蓄電池で日本ガイシ <5333> [東証P]やマクセル <6810> [東証P]、送配電に絡む東光高岳 <6617> [東証P]など。また、円高と実質賃金上昇によるメリットが期待できる消費関連株で神戸物産 <3038> [東証P]や良品計画 <7453> [東証P]、ニトリホールディングス <9843> [東証P]、サイゼリヤ <7581> [東証P]など。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(ささき・かずひろ)
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家の傍ら投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・香港・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。
株探ニュース
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2024-06-17 10:45:00Z
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