パナソニックがミラーレス一眼カメラなどのサイトで、自社製品で撮影していない有料画像を多様していたことが発覚し、問題となっている。カメラの作例と受け取られかねない使用例もあり、「性能を誤認させる」との批判の声が上がる。「ストック画像」と呼ばれる有料画像は、その手軽さから今や企業の広告・宣伝で欠かせない存在となっているが、過去に問題となった事例もある。業界関係者は「使用する際は『正直であること』を意識する必要がある」と指摘する。
5月下旬、パナソニックのミラーレス一眼カメラの新製品「LUMIX DC―S9」のサイトに他社製カメラで撮影された有料画像が使用されていることが交流サイト(SNS)上で指摘され、炎上する事態となった。ほかの製品でも有料画像が多用されており、一部のレンズの性能を訴求する項目では、当該製品では撮影できない、他社製の望遠レンズで撮影した画像が掲載されていた。パナソニックの担当者は「20年以上前の感覚でサイトを制作していた」ことが原因とした。
パナソニックは「ストックフォトの不適切な利用があった」と謝罪し、現時点で削除や差し替えが必要な画像は計68件、注釈などの追記が必要な画像は計51件あったと発表している。
ストック画像は、さまざまなシチュエーションに合わせてあらかじめ撮影・作成された画像で、使用料を支払うことで広告・宣伝などに利用できる。かつてはフィルムを郵送してやりとりをしていたが、インターネットの発達によって24時間いつでも安価に画像を入手できるサービスが2000年代ごろから登場。提供される画像は、一定の水準をクリアしていれば誰でも登録でき、1枚数百円程度から使用できるため、爆発的に拡大した。
調査会社のグローバルインフォメーションによると、ストック画像や動画などを含むビジュアルコンテンツ市場の規模は、2023年に169億1千万ドル(約2兆6600億円)と推定され、30年には584億1千万ドルに達すると予測されるという。
コストも時間も節約できるストック画像を企業はこぞって活用する一方で、問題となる事例も散見される。
19年に世界最大級の国際広告祭「カンヌライオンズ」で受賞した韓国の自動車メーカー、ヒョンデ(現代)の広告が、ストック画像を使用しており物議をかもした。運転中のメールの無意味さを啓発するために特定の速度で走行中に絵文字がどのように見えているかを示したという広告だったが、実際は有料画像を若干加工しただけだったため、独自性に疑問が呈された。
画像を提供する側のモラルが問われるケースもある。23年にソニーネットワークコミュニケーションズの光回線「NURO光」が広告に使用したイラストが、作者に無断で有料画像サイトに登録されていたものだったと判明。同社は作者に謝罪し、広告を削除することになった。
ストック画像サービスの国内最大手「PIXTA(ピクスタ)」で広報を担当する小林順子氏は「単に楽だから使うのではなく、誤解を与えないような使い方をする必要がある」と指摘する。同社ではストック画像を利用する場合には支払い完了までに複数回にわたって使用上の注意を表示する。また、画像を提供する側は、著作権などに関するテストをクリアしなければ登録できない仕組みになっている。
小林氏は「ストック画像は広告や宣伝に欠かせないものになっているからこそ、適正な利用を心がけてほしい」と話す。
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2024-06-16 05:47:12Z
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