日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(65)が、中東オマーンの販売代理店に支出させた日産の資金を私的に流用したとして会社法違反(特別背任)の疑いで逮捕された事件で、東京地検特捜部がゴーン容疑者の妻の任意聴取を検討していることが6日、関係者への取材で分かった。

妻が代表を務める会社が、振り込まれた資金の一部をクルーザー購入代金に充てた疑いが浮上しており、特捜部は入金の経緯や使途などについて説明を求めたい考えだ。

オマーンの代理店「SBA」から、ゴーン容疑者が実質的に保有するレバノンの投資会社「GFI」に日産の資金が送金された際、複数の会社が介在していた疑いがあることも関係者の話で判明。特捜部は、ゴーン容疑者が自身への還流を隠す意図があった可能性もあるとみている。

特捜部によると、ゴーン容疑者は、日産の子会社「中東日産」(アラブ首長国連邦)からSBAに計約17億円を支出させ、うち計約5億6000万円をGFIの預金口座に送金させ、日産に損害を与えた疑いが持たれている。

関係者によると、GFIの資金の一部は、タックスヘイブン(租税回避地)にあるゴーン容疑者の妻の会社「BY」に流れ、クルーザー(約16億円)や水上バイクの購入代金に充てられた疑いがある。特捜部は複雑な資金の流れを解明するには妻の聴取が必要だと判断したもようだ。

GFIからは、息子が最高経営責任者(CEO)を務める米カリフォルニア州の投資会社にも資金が渡ったとみられる。

GFIの代表はゴーン容疑者と親密な関係で、SBAの経理担当を兼務。ゴーン容疑者の指示で資金を移動させていたとされる。

東京地裁は5日、ゴーン容疑者の勾留を14日までの10日間認める決定をし、弁護側の準抗告も棄却した。ゴーン容疑者は「(日産からの支出は)正当なものだった」と容疑を否認している。(共同)